殺戮マシーンになれ
度胸の座った奴だなと栄田三佐は思った。しかし、ここで言ってやるが青野の為だと栄田は強烈な言葉のマシンガンを浴びせた。マシンガントーク栄田、それこそ彼の隠されたハンドルネームだった。
「訓練だからこそ、本気でやる必要があるんだ。有事のあらゆる状況に対応出来る様な備えをしてこそ、最後の砦に成りうる。バイ、マシンガントーク栄田。」
「青野、俺はお前の素質を買っているから言うんだ。20年もこの仕事やってるが、御前のように素質を備えた奴を見たことがない。だからこそ本気になって欲しいんだ。それで怪我人が出ても良い。怪我をする奴が貧弱なんだ。軍隊はつええ奴の天下だ。暴力装置なんて甘いもんじゃねぇ。もっと非情になれ、青野。俺達は戦闘マシーンに成りきるんだ。国家の国体の護持の為に一般国民を代表して、非情なる殺戮マシーンになれ。だがお前は、もっと高みを目指せる。そうでなければ、お前の素質は地に埋もれてしまう。それだけは何としても避けたい。その為にワザワザこうして呼びつけたんだ。」
栄田三佐は言いたい事を言い切ると、胸のつかえがおりた。しかし、言われた方の青野は煮えくり返らない様子であった。
「殺戮マシーンなんてなれないっすよ。極論じゃないですか? 自分はそんな事をする為に自衛隊に入った訳ではありません。」
そう言うと、手に持っていたコンバットナイフを壁に突き刺して部屋を出て行ってしまった。栄田三佐はそのコンバットナイフを見て思った。自分の若かりし頃にそっくりだと。強い正義感は時として、人間を駄目にしてしまう事もある。この青野と言う男の教育は、思ったよりも手強いなと言うのが、栄田三佐の手応えだった。だがこれは、井口二佐に言われて頼まれた仕事の1つでしかない。




