初期装備
SBUに限らず、「体で覚えろ!」それが自衛隊流の教え方である。基本装備は、防水小型無線機に通信装置から始まり、ベイツのコンバットブーツや、暗視装置が装備されたヘルメットや、指先の開いたタクティカルグラブに大型のコンバットナイフや、大型自動拳銃シグザウエルP229にプラスチック手錠とこれだけの装備を見ても、普通の水兵でない事は充分分かる。
青野と赤村にも当然の事ながら、これらの初期装備は渡され、合流初日から訓練は始まっていた。他の隊員の事など、考える余裕もなく付いて行くので精一杯であった。
教育隊での訓練が、子供のチャンバラに見える程、余りの格差に二人は、驚きを通り越して呆れるものがあった。班毎に若干の差はあるものの、間違いなく海上自衛隊の中で1番厳しい訓練をしている事は間違いない。
ある米国の政府高官や、米国海軍上層部は口を揃えて、こう言ったという。
「日本の海上自衛隊にある特殊部隊(特別警備隊)を日本の政治家は全く使いこなせていない。あれじゃあ"宝の持ち腐れ"だよ。」
と言われたという話は有名である。
それだけ練度・完成度の高い部隊が在る事すら多くの国民には知られていない。
「なぁ、赤村? こりゃあ来る所を間違えたかもな?」
「仕方ねぇよ。艦隊勤務かと思ったら、いきなりこんな部隊にぶち込まれたんだから。まぁ、体力はつくし、俺は好きだけどな、黒桜は。」
赤村の読みは甘かった。何処で作戦を行っても良いようにとにかく極限まで力を身に付ける。体力が、どうなるとかそう言う次元の話ではない。殺るか、殺られるか。国民の生命と財産を守る為に、身を粉にして働かなければならないのである。
「しかし、これじゃあ陸上自衛隊のレンジャーみたいだな。」
青野の意見は最もだった。やっている訓練の数々は、レンジャー教育も顔負けの白兵戦闘がメインだったからだ。
「でも俺達は特別警備隊員だ。何だかそう言う気持ちになるんだよな。この黒桜を見ているとな。」
「日本国を守れるのは俺達海上自衛隊しかいないからな。勿論、陸自や空自もいるが……」
「まぁ、この部隊は現場の意識が高くて、かなり行動に制限があるのは、確かだな。ま、言うても海自の一部隊じゃけの。」