備えておくという仕事
赤村と青野は、休憩中久しぶりに話す機会があった。
「しかし、SBUの訓練て鬼だよな。きついわ修羅だ。ガチで。」
「そうだな。でも、赤村はしっかりやってると思うよ。たまに寝るけど。」
「正直なんでこんな事やらなくちゃならねぇのか分からん。」
「仕方ねぇよ。これが俺達の仕事なんだから。選ばれちまったもんは仕方ねぇ。」
「にしてもよ、教育隊で嘘つかれた訳だろ?」
「赤村、何はともあれ俺達がやってる事は遊びなんかじゃないよな?」
「遊びじゃあねぇよ。こっちは毎日神経磨り減らしてるつうの。」
「だろ? だったら教育隊で嘘つかれたみたいな事は言うな。」
「妙に物分かり良くなったな? 青野ってそんな奴だったっけ?」
「こう言うしんどいハードな訓練ばかりやってると、考え方変えてかないとやってけないよ?」
「自衛隊に洗脳されたか……。まさかお前が?」
「そうじゃない。幼かった考え方が変わっただけだ。」
「でもさ。実際俺達が投入される事案なんてあるのか?」
「来るか来ないかじゃない。備えておくのが俺達の仕事なんだ。」
「立派だな。俺はお前みたいな考え方は出来ない。」
「別に俺の考え方を押し付けてるつもりはない。」
「俺達のやっている事って、本当に日本の為になってるのか?」
「分からん。分からんけど目の前のきつい訓練を全部クリアしてから、考える事じゃね?」
「確かに目の前のしんどい訓練は楽勝でクリア出来てから物言えって井口二佐に言われそうだな。」
「言ってたろ? 角野一尉が。海の上じゃあ誰一人助けてくれないって。」
「大変な事は大変だが、きっと悟れる日が来るよ、」
「特殊部隊って名前だけじゃなくガチできついわ。それは分かった。」
「バカタレ。皆、どんな奴も生きるだけで精一杯だよ。」
「こうやって、話すの久しぶりだな。お互いに。」
「また、機会があれば飯でも食いに出掛けよう。」
「そうだな。とりあえず今日のラスト半分クリアしねぇと、角野一尉にどやされる。」
「鬼の教官にどやされちゃ、テンション下がるからな。」
二人にとっての試練は、まだまだ続きそうではある。




