一蓮托生の部隊
今日の講義の内容は「沈船離脱法」であり、担当はA班班長の角野一尉だった。
「沈み行く船から安全に離脱する方法は二つある。○○と××だ。」
講義というモノは退屈なものであり、しこたま肉体的にしごかれているSBU隊員にとって、座学は、地獄級の睡魔と格闘せねばならない。今日は約1名がその誘惑に負けた。赤村二士だ。
「おい、赤村起きんか?」
「誰か仕方ねぇバケツに水入れて持って来い!」
何度も呼び掛けたが、夢の世界から赤村は戻って来ない。すると、青野がバケツに水を入れて角野一尉に手渡した。そして、それを赤村にぶちまけた。
「バッシャー!!」
すると、赤村は直立不動で起立し敬礼した。これには、一緒に講義を受けていた者達全員が笑った。だが、ただ一人角野一尉だけは、怒りがおさまっていなかった。
「赤村!貴様任務中に寝るんか?」
「いえ、その様なことは……。今日はついうとうとしてしまって……。」
「俺の講義は任務の1つではないのか? しかも言い訳までして。たるんどるぞ。良いか? 俺達を待つ戦場では、寝るどころか、油断すらままならない、状況が待っている。今日の講義もそういった状況で使う知識だ。にも関わらず、お前は日頃の鍛練のせいにして、座っている事を良い事に、睡眠をとる。そんな学生気分では、困るんだよ。海の上で助けてくれる奴がいるのか? 良いか、海上では誰一人助けてはくれない。鱶がいれば鱶に食い殺されるだろうし、海水に長時間浸かれば、SBU隊員もただでは済まない。そういう知識も無いまま作戦に従事して困るのは赤村だけなら好きにしろ!! だがな、海上の特殊部隊である我々は一蓮托生なのである。だから、困るんだよ。良いか? 次寝てたら、100キロ行軍だからな?」
と、角野一尉は井口二佐や、栄田三佐とは違い、初見のミスから厳しい課業を課すことはしなかった。




