黒桜(こくおう)
SBUは元々は、海賊対策やテロリストを制圧するという目的(主任務)で創設された部隊である為、訓練や、作戦中のほとんどを海中若しくは海面下スレスレで行う。水路潜入等も当たり前の様にあり、装備品は海中にしばらく浸かってしまう。
その為、どんな理由があるにせよ耐水性の高い武器でなければ、SBUにとって適切な装備とは言えない。
また、護衛艦おおすみクラス(約1万トン)の艦にSBU隊員が乗り組み、強襲揚陸的なミッションを行う事も充分有り得る。
その為にRHIB(高速揚陸艇)や、LCAC(エアクッション艇)を保有している。これらの装備品に乗り組んで、海上での活躍の場を広げている。
RHIBは、フランスのゾディアック社製で、最高速力40ノット(時速74キロ)以上で航行する。あのアメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ始め世界の水陸両用特殊部隊御用達の物を海上自衛隊は保持している。
余談が長くなってしまったが、SBUはどちらかと言えば海兵隊に限り無く近いタイプの部隊で、陸上自衛隊の水陸機動団(島嶼防衛部隊)に近いと言える。
A班に配属になった赤村と青野両名は、指導教官として、大黒三尉が付き直上の相談役として、倉岩海曹長が付き、新体制を進める事になった。二人はどんな荒くれ者がいるのかと、思い浮かべたが、ぱっとみは普通の自衛官であった。
しかし、制帽のエンブレムである桜と錨が黒メッキされているのを見て、これが黒桜かと特殊部隊に配属になった事を痛感した。黒桜について気になった青野は、一応相談役の倉岩海曹長に確認してみた。
「青野、お前よくそんな所に気が付いたな。あれはSBU隊員と一般隊員とを見分ける為に、黒メッキにしてあるのさ。皆、黒い桜なんて縁起悪いから近寄って来ないけどな。まぁ、それでも俺達は、この黒桜にプライドを持って仕事をしているがな。」
と、詳しく教えてくれた。これから先青野と、赤村を待つのは、地獄か修羅場か。天国という選択肢がない事だけは、分かっていた。