日米安保条約
また、その司令官は海軍中将なので、階級的には在日米司令官と同格になる。従って第7艦隊の艦船艇や航空機をトモダチ作戦に投入する為には、在日米軍司令官や第7艦隊司令官よりも階級が上の海軍軍人を配置した方が、指揮系統は整う事になる。
実際、この時の米軍のそれは目を見張るものがあった。飛行場としての機能を損失した宮城県の航空自衛隊松島基地と、仙台空港の復旧では、米空軍のMC-BOP型特殊作戦機が、管制機能を失った松島の滑走路に地上からの誘導なしで着陸。その1時間後には、運んできた機財と人員で、飛行場の管制機能を応急回復した。
同機体から降ろした機材と人員の1部は航空自衛隊員と共に地上から仙台空港に向かい、破片や残骸が散乱する滑走路で、使用可能な部分に印をつけて、今度は重機や支援物資を積んだMC-130H特殊作戦機で着陸させたと言う。地上からの管制がなく、部分的にしか使えない滑走路への実戦さながらの強行着陸は、米空軍特殊部隊と特殊作戦機の面目躍如だったと言える。
一方で現地の自衛隊員は、米空軍特殊部隊の実戦能力をまざまざと見せ付けられた。トモダチ作戦で米軍は兵員2万人、航空機140機、艦船20隻以上を投入した。(しかし、実はこの救援活動については、日米安保条約の条文に直接当てはまる規程が無く、米国にとって日米安保条約上の義務は無かった)
だからといって、日米安保条約に意味がなかったという訳ではない。一般に外国籍の軍隊が多国で活動する場合、その外国籍軍隊の取り扱いは、派遣国との受け入れ側の国の間で、取り決める必要がある。しかし、常に日本国内で活動する米軍の活動は、すでに日米安保条約に基づく地位協定があった為、日本はスムーズに米軍の支援を受け入れる事が出来たと言える。横田基地に派遣され、トモダチ作戦を自衛隊の立場から見続けた自衛隊幹部の一人は、後日ある記者にこう語ったと言われる。
「米軍の意思決定を目前で見られたのは、将来の日本の為に大変勉強になった。」
と、語ったと言う。




