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黒い桜~The black cherry blossom ~  作者: 佐久間五十六


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生半可な正義感

 日本の置かれた状況下では、必ずしも充実した戦力ではないかも分からない。人数も部隊の規模も何もかもが、人口比率の割には突出して少ない。それでもこの組織が、存在する理由は国民の生命と財産を守る為にある。泣き言はいらない。

 冷徹なる殺し合いでもなんでも、任務とあらば四の五の言ってはいられないのである。きっと栄田三佐の言いたい本音はそういう事なのかもしれない。青野はそう思った。青野は悔しかった。自分の未熟さを見透かされた上に馬鹿にされた事が。

 人間としてまだハードルをクリアしなければならない部分がある事は青野にも分かった。強さと言うのはそういった確たるベースの上にしかないのである。腕力は鍛えれば何とか上昇する。しかし、精神力というのはバーベルをいくら上げてもさほど変わらない。

 揺らぐ事のない自信を身に付ける為には、様々な事を経験するしかない。そして、それを自分から求めなくてはならない。

「ここは民間会社じゃねぇ!」

 その発言はきっと民間会社なら与えられた仕事をやるだけで生活になる。多少の甘えや弱音や、愚痴や上司の悪口を言っても、許される風潮がある事は確かにある。民間会社で働く多くの人には申し訳ないが、そういう気の緩みはある。だが、SBU隊員の置かれた状況を考えると、とてもではないが比較する事は不可能だ。置かれた環境が違い過ぎる。

 SBU隊員とは、かくあるべき。という様な保守的な考え方をする訳ではないけれど、人命を守る事と、国家を防衛するという事は、生半可な正義感や愛国心だけでは続かない事は事実である。

 こんなに国を思っています。でも結果は出ません。それでは自衛官失格の烙印を押されるのは仕方がない。税金で生活してるのだから。

 オール・オア・ナッシング的な考え方は帝国海軍以来の日本人の考え方ではあるが、SBU隊員には、それに近いものが要求されるのは間違いない。そういう事の出来るだけの過酷な訓練も力も備えられる事をしているのだから。せめて国家の附託に応えられる部隊であって欲しい。

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