誇り高き部隊
井口二佐はよく、部隊運用の難しさを訓示していた。そこには、SBU発足当時から指揮官として第一線で活躍してきた井口二佐ならではの、苦労話が沢山詰まっていた。
「まぁ、100人足らずの部隊だが、これだけの精鋭の集まりだ。運用するのも一苦労だ。自衛官は約30万人いるが、これほどの練度と実力を持った部隊を私は知らない。探せば見つかるのかも知れないが、見つかったとしても、その数は少ないだろう。自分の手で育て上げた部隊だから、と言って贔屓目に見ているわけではないが、恐らくSBUは、海上自衛隊最強の部隊であると言える。最も、SBUは初めから今の立場や位置付けを確立していた訳ではない。沢山の失敗もしてきたし、訓練中に死者を出した事もあった。そう言った試練を乗り越えて来たからこそ、今のSBUが存在出来ていると言える。何が大変って、まずこれだけの猛者の維持管理だろう。そしてそいつらを、一人前に磨きあげなければならない。こいつは大変な作業だと言える。言い替えれば、日本刀を磨きあげる感覚に近い。刀一本一本に個性がある様に、隊員一人一人にも個性がある。それを上手く引き出してやるのが、小隊長の務めだ。苦労は絶えないが、やりがいはある。大変じゃないと言えば嘘になるが、我々にとってSBUと言う部隊は、誇り高き部隊である事は確かである。」
井口二佐にとっては、SBUは誇れる部隊であり、やって来た事に間違いはないと信じている。