可愛がるだけでは駄目
民間企業であってもそうなのかもしれないが、可愛がるだけでは人はついて来ない。時に厳しく時に優しく。TPOをわきまえる様に指導してこそ、人はついて来るものだ。スパルタと溺愛の中間の教育方針が本当は望ましいのであるが、現実は中々そう上手くはいかない。
そして、人には好みがあり、厄介な事に上官と部下の人間関係にも、少なくない影響を与えている。つい、好みの人間ばかりに目が行ってしまうものだが、こればかりは自衛隊も人間の組織である以上、仕方の無い面がある。とは言え、部下がついて来なければ、SBUの様な特殊部隊にとっては致命的である。
どんな人間が部下として来ても、ある程度のレベルまでは従わせる事が、上官にとっては課題となる。上官の命令は現場の部下にとっては絶対である。諸外国では上官に逆らえば、軍法会議ものの扱いを受ける所もある。逆らう事は出来ない。
しかし、人がついて来るか来ないかは、全く異質な問題であり、自衛官としてと言うよりは、人間として部下がついて来てくれるのがベストだ。いずれにせよ、可愛がるだけでは部下の効果的な教育方針とは言えない。
青野と赤村も、その点に関してはよく理解しているつもりだ。何せ自分の教官だった人間に対しても、飴と鞭を使い分けていたし、飴ばかり、鞭ばかりでは誰もついて来ない事は、身を持って体験していたからだ。
部下の事を本気で育てたいと思うならば、断固たる信念を持って厳しさを持つ事が大切である。部下にとっても、上官にとっても、それが最良の道である。無論、それが100%上手く行ったとしても、それだけで部下の育成が完全に終わった訳ではない。どこまで行っても上官と、部下の関係が終わらない限り終わりはない。