求めるは強靭なる肉体と精神
井口二佐から赤村と青野はとある訓練を、新入隊員に施す様に言われていた。それは、新入隊員を迎え撃つSBU3大訓練の一角を占めるものであった。この3大訓練はスリーキラーズとも呼ばれ、井口二佐に命ぜられたのはスリーキラーズの中でも最も難易度の低い訓練だった。
第一から第五は匍匐前進を使いながら、標的となるボールを集める。ただそれだけの事なのだが、ボールが置いてある場所には、スナイパーならぬカラー弾を発射する先輩隊員が二人おり、カラー弾を被弾すると1.5㎞の遠泳が待っている。二人の先輩スナイパー隊員は、猛者の集まるSBUにあっても、射撃のスペシャリストだ。中途半端な事をしてしまうと、必ずそのカラー弾の餌食となる。
赤村や青野もよくカラー弾を被弾して遠泳に出た新入りの頃の事を思い出していた。案の定、新入隊員の多くがカラー弾を被弾して遠泳をさせられていた。ここをクリアするには一人では無理だ。複数名でスナイパー隊員を制圧し、安全を確保して被弾せずカラーボールをとる。
スリーキラーズの中でも中級にランクされている、水路潜入と上級にランクされている格闘訓練も、徐々に行われていく事になる。これらの訓練に耐えきれずにドロップアウト(脱落)して行く者もいなくはない。だがこれしきの訓練で音を上げるような軟弱な人材は求めていない。酷な言い方かもしれないが、SBUとはそういう部隊である。
中途半端な実力は足を引っ張るだけであり、そういう人材は別の部隊で力を発揮してもらう。そういう教育を進めて行く。中途半端な実力ではSBU隊員は諦めろと言う事になる。明確にそれを示す事で、新入隊員に選ばれし者という高いモチベーションを保てる様にすると言う狙いもある。