記憶の整理
大滝三曹は、予想外に濁した答えしか返してくれなかった。
「私だけじゃなかったのね。サバイバルナイフの試練。」
赤村は?マークの大量についた自分の顔に気づかぬまま、当たり前の事を聞いた。
「あれって、SBUに入っている人は全員受けているんですか?」
大滝三曹は、笑いながら答えた。
「井口二佐の性格を考えてご覧なさいよ。平等に何事もやる人でしょ?皆、口にしないけどね、この部隊にいる人間は皆色々抱えてんのよ。」
それ以上の事は何を聞いても、自分で答えに辿り着け、の一点張り。赤村は、少々イライラしていた事は確かだ。だが、大滝三曹は最後にこう言い残した。
「ちなみに私は二年かかったわよ。じゃファイト!!」
では、自分はいつになったらその答えに辿り着けるのかと思ったが、期限の無い課題なのかとも思えるような、モノだと思った。
青野はどうなのか? 聞いてみた。
「サバイバルナイフの試練?はぁ?何だそれ?」
「ああ、知らないなら良いんだ…。」
どうやら井口二佐がサバイバルナイフの試練を平等にやっていない様だ。それとも、青野の奴が嘘をついているか。まぁ、そんな事はどうでもよい。大滝三曹の幻想が辛くも崩れる事にはなった。
「大滝の野郎ホラ吹いてやがる。てゆうか何だよ、サバイバルナイフの試練って……。」
赤村は、出口の見えない課題にウンザリしていた。しかし、出された課題をクリアしないと気が済まないのが、赤村甲太という男である。
他力本願はやめて、自分の力でさっさとクリアしようと思い立ち考え始める。海自隊員として、SBU隊員として、必要な事。つまりニーズは恐らく、いくつかの違いはある。そして、同時に共通している所もまた複数個あるはず。それらを全てノートに書き出した。そこから始めてみる事にした。
自分の考えている事を整理するというのは、思いの外に効果適面であった。自分の力でやる事によって、記憶にも残り易くなる。まだ全体像が見えた訳ではないが、赤村の中で何かが少しだけ見えた瞬間であった。無論、まだ継続して考えてやる必要はあったのではあるけれども。