下士官以上士官未満→准海尉
現場の叩き上げという観点で見れば、C班の豪野准尉ほど、ピタリとあてはまる人間はいないだろう。豪野准尉は、SBUに来るまでは潜水艦で下士官として長年活躍していた。
彼に転機が訪れたのは、9.11アメリカ同時多発テロ事件が起きた事によるものだった。それまでの豪野准尉は、潜水艦に骨を埋める覚悟だったが、海上テロを無くす(防ぐ)為の部隊が海上自衛隊に作られた事を知り、SBU隊員に成る事を志願した。勿論、潜水艦乗り(サブマリナー)としての経験を井口二佐に買われての部隊入りだった。
だが、豪野准尉は士官でも、下士官でもない。おまけに潜水艦乗りと来たもんだ。欠点は中途半端である事だが、准尉と言うポジショニングは、部隊の中で士官や下士官(曹士隊員)の橋渡しをしてくれる存在になって欲しい。星の数を埋める事は出来なくても、部隊運用をスムーズにして行く事になる。
豪野准尉は、決して前にガンガン押して出るようなタイプでは無かったが、実直で誠実な人柄は、部隊の中においても貴重な存在になっている。潜水艦とは全く異なる部隊であるが、豪野准尉は、その違いを寧ろ楽しんでいた。違いの分かる海上自衛官。それが豪野准尉だ。今はもう制度としては准尉と言う階級は無くなってしまったが、豪野准尉は三等海尉に成る事を拒んでいた。それが叩き上げの意地だと言う事を知るのに、時間はかからなかった。