強さと信頼感
入隊から早くも2年以上が経過しようとしていた、青野と赤村両名であったが、「お前に任せても大丈夫。」などと言う台詞を言われた事は一度もない。
井口二佐にはよくこう言われる。
「早くお前に任せても大丈夫。」
と、言われる事を若い隊員には、目指すべきだと常に伝えていた。しかし、精鋭揃いのSBUにとっては、そんな台詞を言われる為には、圧倒的に経験値が不足していた。
たった2年SBUに居たくらいでは、諸先輩方に追い付けるはずも無かった。赤村も、青野も、その現実をきちんと噛み締めていた。
しかしながら、明らかな成長がある事を感じる事あり、もう少し努力すれば、届くかもしれないものであるという事も、感じていた。
自衛官にとっては「お前に任せても大丈夫。」そう言って貰えるのは、つまり一人前になった事を意味するものであり、公認の台詞とも言える。その言葉を貰う為に日々努力をする。
勿論、ガムシャラに努力をしているだけでは限界がある。しっかりとしたビジョンと戦略を持ちながら、計画的に鍛練を積み重ねる。そして磨き上げる。赤村も、青野もまだまだその途上にあった。
では、彼等がその台詞を言って貰うには、どうすれば良いのだろうか? 単純に強くなって行くだけでは駄目だ。その台詞に辿り着くには、強さと信頼感、それがキーワードである。両方がバランスよく、高水準で維持され尚且つ、誰から見ても同じ好評価が下ると言う事が必要になる。越えるべきハードルは決して低くはない。