一兵卒の信念
「なぁ、青野? 俺達って何の為に戦っているのかな?」
「正直な所、よく分かんねぇよな。国の為じゃないし、自分の為って訳でもなく。赤村はどう思う?」
「そういう教育がなされていない事が問題なのかもな。こういう命がけの職種には特に自衛官の様な特殊な人間にはな。国家が大切にしていない様に感じるんだよな。日本という国を守る為の技術がどうのこうの言う前に、まずそういう心構えをきちんとしなくちゃならん。ところが、自衛隊の教育というのは、徹底的にナショナリズムとか、国威発楊をしてしまう事を排除しようとしている。寧ろ、戦後日本の国防において、占領政策を指揮したGHQひいてはアメリカの影響にあると思うんだよな。」
「お前、そんなところまでよく考えられるな?俺なんて、自分の事で精一杯だぜ。立派だし尊敬するぜ!」
「一番大切な事をきちんと教えないのは、日本人の悪い癖だよ。自衛隊という立場的に相当な制約下にある部隊が、きちんと機能する為には、何はともあれ高い士気を持ち続けなくてはならない。まぁ、一兵卒の俺が言えるのは、こんな所だな。」
「どんな理想を持っても、自衛隊は階級ピラミッドだ。それに逆らう事は出来ねぇ。自分の意志が強固でも、そのベクトルとは反対の方向の命令が下る事は大いにある。でも、大切だよな。そういう理想とか、信念とかって。」
「日本が戦争に巻き込まれたら、俺達は最前線で体を張らなくちゃならないからな。待った無しにな。」
「国家の為に志願して戦うのって、そんなに簡単な事じゃないのかもな?」
「口で言う程楽ではないだろうけど…。」
「俺は命令があればそれに従う。自分の任務を全うするまでだ。」
「勿論、俺もそうだ。与えられた任務を全うするまでだ。」
この士気の高さが徴兵制とは違う所だ。