下士官の叫び
明日山一曹と海沼二曹と大滝三曹の3人が珍しく、一緒に食事をしていた。話題は、使えない上司についてだった。
「自衛隊の場合はさ、上司になる人間は防大を卒業している事が多いだろ?」
「まぁ、その事については100歩譲って良しとしよう。」
「若い防大生あがりは特に使えない。場数踏んでないからな。」
「防大あがりが使えないってのは、皮肉ですね。」
「勿論、それは一部の人間だ。防大あがりでも優秀な人間もいる。全員が使えなかったら防大何やってんだって話になる。」
「使えない上司に限って威張りますしね。」
「まぁ、それは今に始まった事じゃないよ。」
「自衛隊が本当に実力主義を掲げるならスタートライン位は同じにすべきかもな?」
「その点については同感です。」
「俺達叩き上げの古参下士官の方が、よっぽど経験値があるってもんさ。」
「ちょっとペーパー試験が良いからって調子に乗りすぎなんだよ。若造のくせに。」
「旧日本海軍でも海軍兵学校や海軍大学校出身のエリート達は、現場では嫌われてたというか煙たがられていたみたいですし…。」
「まぁ、エリートの多くは失敗してそこから立ち上がってるんだ。俺達下士官がいなきゃエリートだろうと部隊を動かせない。」
「まぁ、それはそうとこのSBUという部隊は、本当に何を目指しているのか、分からなくなってしまう事があるんだよな。若い奴等とハードなトレーニングをして、生きるか死ぬかの格闘をやって、泳いで、撃って、潜って。今の日本にSBUの存在意義なんて無いだろうと思うんだけれどな。」
「黒子に徹せよ。って僕は教わりました。でもそれが自分達の仕事ですからね。」
「こうして愚痴る位しか出来ませんけどね。」
自衛隊で多くのウェイトを占める防大卒のエリートと最前線の現場で働く下士官。SBUにおいてもこうした実力のある下士官がいるからこそ、成り立っている部分が有る事は否めない事実である。