井口二佐の信念
井口二佐は、よく青野や赤村にこういい聞かせている。
「いいか。精神論に傾注し過ぎる事は良くない事だ。だが、(俺達には負けじ魂これぞSBU)という信念の元に己を、鍛えて行かねばならん。根性とか気合いとかでは、どうにもならんが、それでも俺達は根性や気合いはあって当たり前。合同訓練でも分かるように、アメリカと日本の実力差は、歴然としている。だからと言って、我々日本人が体格差を理由に、いつまでもアメリカを追い越せないままでいることに甘んじている事が最良の道だとは思えない。我々SBUにとって、最良の未来はアメリカにとって欠かす事の出来ない同盟国の海上戦力になる事であり、特殊部隊としての実績を蓄える以外にはない。今は大変かも知れないが、現場の海上自衛官が出来るのはそのくらいのものだ。我々の力は微々たるものだ。しかし、であるがゆえに我々の力を集め日本を防衛する以外には日本は生き残って行けない。他に道はない。分かるな?青野、赤村!」
この話を聞かされるのは、いつも決まった時間である。訓練終了後の小隊挨拶を終えてからである。まるで井口二佐はロボットにでもなったかのように同じ台詞を毎日聞かされる。
しかし、よく考えると井口二佐の言っている事は大切な事である。現状の海上自衛隊の一部隊として、その最後の砦として何が出来るのかという事を明確に示してくれているからだ。言われてから初めて気付く事は大いにある。くどい様だが、井口二佐は、あえて同じ事を何度も言う。
それが強力な部隊を作る為に必要な事だと考えているからである。それが井口二佐の信念でもある。