塵も積もれば山となる
A班は、海上テロ制圧訓練の為、アメリカ海軍と韓国海軍とオーストラリア海軍と共に合同演習に臨んでいた。
A班の中でこうした他国海軍との合同演習の経験があるメンバーは、ごく少数であった。にも関わらず、流石のSBU隊員に選抜されるだけの事はあり、すぐに対応する能力を保持していた。言語は英語で統一されていたが、韓国人もオーストラリア人も英語で流暢に会話をしている。
こうしたコミュニケーションが取れるという事が、多国籍間のチームで演習を行う時には重要なポイントとなる。コミュニケーションがきちんと取れなければ、満足に作戦を行う事は出来ない。口頭で英語が伝わらない場合は、ボディーランゲージで伝達する。そうやって工夫しながら、何とか意思疏通を図ろうとする。リムパックの様な複数の国が参加する演習では、そういった言語連携能力の向上に努める。作戦の成功よりもコミュニケーションの連携の方に力が入っていると言っても過言ではない。
英語が万能ランゲージの役割を果たしている一方で、地域言語である日本語や韓国語に興味を示すアメリカ兵も多い。それが友好へとつながるし、会話の種になる。きっかけはそんな単純なものであるのだが、リムパックにおける主要目標の1つとして、アメリカとの関係性の向上があげられる。兵士同士のつながりは、政治家の外交で深まるものではない。
海外での演習は、アメリカや他の同盟国との関係性向上の為にも、必要不可欠と言っても過言ではないだろう。小さな事から同盟関係は深まって行くのである。塵も積もれば山となる。小さな事でも、積み重なると大きな塊となって行く。リムパックでは、兵士のアビリティ(能力)の向上以上に、同盟国との関係性を向上させる事を重視している。