寝るな赤村、青野 倒せ先輩隊員
今日の教官は、B班の小野沢一尉(B班班長)である。座学もあるが、SBU隊員の受ける座学は、強烈な睡魔を伴う。午後イチ(午後1時)という時間設定も良くない。とにかく眠気との勝負である。
やっているのは授業の内容は、結構大切な事だった。水中に体が浸かっている状態で、有効打を相手に与えるには、どういう体勢で待機していれば良いのかという事や、海水に浸かっている状態でも、使用出来る銃火器の種類や、有効な武器となる物の、見分け方など、内容は実戦に役立つモノではあった。
以前にこの講義の間に、迂闊にも寝入ってしまった先輩隊員を赤村と青野は見ている。その時は、講義が一旦中断となりひたすら腕立て伏せをやらされていた。幸いかどうかは別にして、連帯責任とはならなかった。2時間も腕立て伏せをやらされていた先輩隊員は、最後は許してくれと泣き寝入りした。
それ以来、どんな講義でも寝ないように二人は心がけていた。ノートもきちんととるようにしてとにかく眠気をそらせた。
肉体の教練がハードなだけに、座学で眠くなるのは仕方の無い事ではあるが、SBU隊員たるものその誘惑に負けるようでは、戦場の大事な場面で、死に向かう事になる。折角訓練で、良い評価を貰っても、実戦で使えないと判断されれば、即座に配置転換である。
自分に負けるようでは、自衛官という安定した職場を去らねばならない事にもつながる。厳しくてシビアな様ではあるが、この黒桜を背負う以上は、精強でなくてはならないのである。
一切の甘えや、弱みを見せてはならない。国家を守るという事の重さを赤村と青野は、ひしひしと感じていた。
そんな二人も、ようやく周りに認められる位の成長は、見せて来たし、何より力が付いてきた。階級は最下層だが、努力を影でする事で、先輩隊員をごぼう抜きにも出来る可能性は、大いにある。
しかし、二人には出世欲がなく、彼らにとっての勲章は己の鍛え上げた腕っぷしで先輩隊員をねじ伏せる。その一念だけだった。