え?護衛艦勤務じゃないの?
時は2020年春。今年も海上自衛隊に粋の良い若い自衛官が二人入隊してきた。
一人は、青野和人18歳。
もう一人は赤村甲太同じく18歳。
二人は面接で志望した通り、3ヶ月の教育隊での教育期間終了後は、護衛艦乗り(ボースン)になれるものだと、思って入隊してきた。この教育期間中に受けた適性検査にまさかの合格が出ていたとは知らずに教育隊の期間を全うした。二人は、同期入隊の他の海自隊員と共に3ヶ月の教育過程を横須賀で過ごす。
この日は教育過程を終了した者達が、明日から世話になる部隊に挨拶回りに行く日だった。赤村・青野両名は、部隊配属先未定となっていたので、少しそれは気掛かりであったものの、護衛艦勤務になるという隊員と共に護衛艦「すいせい」に向かった。赤村と青野は、教育期間中は同じ部屋で毎日朝から晩まで一緒にいたので、仲は良かった。
「おい、青野? 俺達配属先未定だけど、護衛艦に乗れるんだよな?」
「何にも言われてないから分からないから不安だけど、(すいせい)に行ったら分かるだろ?」
二人を含む7名の新人はまとめて(すいせい)にやってきて甲板に整列させられた。名前が順番に呼ばれていく中青野と赤村には一切声がかからなかった。それはどういう事なのか、たまらず赤村は、「すいせい」にいた下士官を捕まえて問うた。
「何!? 配属先が未定? とりあえずお前らの名前が無かったのは事実だから、士官に聞いてきてやる。ここで待ってろ!」
そうその下士官に言われ待つこと1時間。ずっと横須賀の海を見ていた。
「待たせたな!青野と赤村2士だったな?あんまり大きい声では言えないが、よく聞けよ。お前達の配属先はSBUの配属だそうだ。お前らの希望は護衛艦勤務って事だったが、奇しくもSBUの適性検査に合格してたらしい。俺も今人事課に聞いてきただけだから、詳しい事は分からん。まぁ、名誉な事だ。きついかも知れないが、頑張れよ!」
「で、自分等は何処に行けば良いのでしょうか?」
「何処に行くかは、機密扱いで教えてくれなかったが、井口徹二等海佐の元へ行ってくれ。とのことだったぞ。」
「分かりました!どうもご丁寧にありがとうございました。」
二人は、「すいせい」から降り、井口二佐を懸命に探し、2時間もかけて、ようやくお目にかかれたのであった。