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第二王子シャルルの姿が完全に見えなくなってから、エミリーは立ち上がってすっと私に手を差しだした。
「殿下、お立ちください。」
私は陽にあたってきらきらと光る美しい金髪に縁取られたきりりとした表情に、どきりとした。
エミリーが王子で、私が姫になったような錯覚におちいる。
え?! いやだ! エミリー、カッコイイ!!
同時に、私を名前ではなく殿下と敬称で呼ぶことにエミリーから距離をとられているようで、胸がふさがれる思いがする。
言われるままに手を乗せて立たせてもらうと、エミリーはきりっとした表情のまま私に言った。
「最近、わたくしを避けておられますの? お手紙を出してもお返事をいただけず、殿下からのお誘いも少なくなりました。
わたくしは、殿下に嫌われるようなことをしたのでしょうか?」
私がエミリーを嫌うなんて、そんな?!
「私の元に、あなたからの手紙は届いていません。お誘いしてもあなたが断ってしまうので、お誘いすることを控えています。」
エミリーが私を名前で呼ばないのだから、私もエミリーを愛称で呼ぶことは難しい。
「わたくしは何度も殿下に手紙を差し上げましたし、殿下からお誘いいただいたものは全て参っていますわ。」
エミリーははっきりと私に言った。
では、エミリーの手紙は差止められ、誘いの手紙はエミリーに届いていないことになる。
誰が? どうして?
エミリーと私の仲がいいことをよく思わない者がいるよいうことか。
エミリーが私の誘いを断り出したのが半年前。ちょうど、第二王子のシャルルが7歳の誕生日を迎えた頃だ。
第二王子の母である側妃が私の母と同じように王子を王にできる強い後ろ盾を求めているということは知っている。
第二王子を王に据えたい者のしわざか?
私が考え始めると、エミリーが掴んだままだった私の手を強く握った。
「率直に申し上げますわ。わたくし、アンリ殿下を慕っていますの。殿下はわたくしのことを、どのようにお考えですか?」
え? え?! 慕ってるって、好きってことよね?
え? これって、告白?!
私、エミリーに告白されてるの?!
うわ~! う、うれしい!
これは、チャンスだ! ここはきちんと答えないと!!