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母である正妃は私たち二人が会うことをとても喜んだ。
政略結婚とはいえ、気が合わない者同士が結婚するよりもお互いに気にいった方が今後うまくいく。
そのための"お見合い(お茶会)"であり、正妃は令嬢たちの様子を観察し、将来の正妃として適性があるかをみていた。
その中でとびきり美しく、凛としていて正妃を前にしてもおじけづかないエミリアーナを、正妃も気にとめていた。
王子がエミリアーナに声をかけなければ、母である正妃がエミリアーナと再び会う機会を設けていたことだろう。
私はこまめにエミリーを王宮に招き、周囲の大人も穏やかに見守っているようだった。
しかし、一年を過ぎた頃、エミリーは私と会うのを断りだした。
エミリーは王子である私の誘いを断れないからこれまで嫌々私と会っていたのかもしれないと思うと、悲しくなった。
それからはエミリーを誘うことを止めて、他の令嬢に目を向けることにし、何人かの令嬢をお茶に招き、話をした。
令嬢たちはどの女の子も可愛くて、恥じらった様子も思わずといった様子で笑うところも、愛らしかった。
でも、エミリーと一緒にいた時ほど楽しいと思えず、二度目の招待をしなかった。
あるとき、エミリーを想ってバラ園を一人で歩いていると、迷路のように入り組んだ道の途中で、ドレスの端が見えた。
不審に思い、よく見てみると、奥まって隠れられそうなところに見慣れた金髪の女の子がしゃがみこんでいた。
「何をしてるの?」
「しっ! 黙って!」
振り向いた女の子はエミリーだった。
相変わらず可愛い!
私はエミリーの隣に膝をついてしゃがんだ。
私の護衛が驚いて「殿下! そのようなことは!」と言うのを笑顔で押し止めて、「私たちを隠して」と言いつける。
私はエミリーの横でエミリーが顔を向けている方を見た。
少しすると、異母弟の第二王子であるシャルルが近づいて来るのが見えた。
「おかしいな。ここを通ったはずなのに?」
シャルルが白銀の髪を揺らしながら私たちの近くを通り過ぎていく。