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私は下心なく、可愛い女の子に近寄った。
女の子の髪はふわふわとした金髪で、天使かと思うような白く透き通るような肌に、触ると柔らかそうな顔をしている。
うん、下心はないのよ。
私は中身が女で、性的対象は男のはずだもの。
でもね、美しいものや可愛いものって、近寄って、もっと見たくなるでしょ?
私は女の子をさらにじっくりと見た。
綺麗なカーブを描いた眉、長いまつげに縁取られた大きな青い目、すじの通った鼻に小ぶりのふっくらとした赤い唇。
素晴らしい!
転生してよかった!
王子として生まれ、貴族たちとの腹芸や、自己防衛の為の汗まみれの肉体強化人生かと思いきや、王子だからこそこんな愛らしい女の子とお近づきになれるなんて!
私の視線に気づいたのか女の子はこちらを見て、花が綻ぶように微笑んだ。
「殿下、はじめまして。わたくし、セイヌーン公爵家のエミリアーナと申します。」
可愛い! 可愛い!! 可愛い!!!
人形のように整った顔で、鈴を転がしたような綺麗な声でしゃべるんだ!
ローズピンクのドレスと相まって、女の子の周辺に架空のバラが見える!
「はじめまして。アンリです。少し、お話してもいいですか?」
私は女の子の声をもっと聞きたくて、彼女を庭園への散歩に誘った。
彼女は「喜んでご一緒させていただきます」と言って、私と王宮内のバラ園に行く。
少し離れて、護衛がついて来ていた。
色とりどりのバラと美少女の組み合わせは素晴らしく美しい。
二人で歩き出して最初のうちに、私はお互いの名前を呼び合う約束を取り付けた。
「アンリ様」「エミリー」と気軽に呼び合っているうちに、エミリーが打ち解けてきた。
皆のいる場所に戻る前に、私はエミリーの綺麗な青い目を見てお願いする。
「私があなたをお茶にお招きしてもいいですか?」
私のお願いに、彼女は目をぱちりと閉じたあと微笑み、ゆっくりと目を開けて頷いてくれた。
ふふふっ。王子でよかった!
こんな美少女、しかも公爵家の令嬢なんて、私が普通の貴族だったら呼んでも来てくれないよ。
アルメシア王国の貴族中で一番権威のあるセイヌーン公爵家の令嬢、エミリアーナは10歳。
対して私は正妃の生んだ男子であり、第一王子、7歳。
年上の女性とならば早めの婚姻ができ、早くに子をなすことができる。
王妃にとって私たちの仲がいいのは望外のことだ。
私はエミリーを何度も誘い、エミリーは嫌がらず、全ての誘いを受けてくれた。