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フケ専T氏

作者: 伊井下弦

もう随分前の事だが、私が上野のゲイバーで飲んでいた時の話。平日の宵の口と言う事ももあり、店には、私(そのころ私はM子と呼ばれていた。)とT氏,二人だけがカウンターに並んで飲んでいました。顔見知りと言う事もあり、下世話な話に花を咲かせていましたが、いきなりT氏が新聞の広告欄をみて、「航空券早割で限定で片道何処でも1万円だって。営業かねて沖縄行きたいな!」と言いだしました。そして「M子一緒に行かない?」とのたまった。


私を誘ってきたのです。その頃、私は三十代後半、T氏は五十代前後でT氏は歳下には野郎言葉で、私は、秘かにT氏の事を慕っていたのです。そんなT氏からのお誘い、私はこう言いました。


「でも、間違いでも起こったらどうしよう、俺、好きになっちゃうかもよ?」

するとT氏が、「大丈夫、M子なら1回ぐらいはやってもいいよ。」

とのお言葉、失礼というかなんというか、でも想像してドギマキしていると。


丁度その時、店の扉があき、六十代半ばのイチゲン親父が、ご来店なさった。そしてT氏の向こう側に座りながら、T氏の新聞を覗き込みながら一言「それって何処でも1万円の航空券でしょ。俺もいきたいなぁ~。」と言いながら、T氏の隣に腰を下ろされた。


それから私が、その店をチェックするまで、二時間近く二度と再びT氏は、こちらを振り向こうとはしなかった。


所謂、『フケ専』ってやつですわ。

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