創立者の私ルール 共通①
――ザアザアと雨が降り、雷鳴が轟く嵐の晩。魔法使いの男は卵を見つけた。
鳥にしては大きなそれは、ドラゴンの卵だと一目でわかる。
魔法使いは何かの縁だと、卵を持ち帰り暖めた。
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「えー!?」
それは突然の出来事だった。魔法使いウィーズィはかれこれ100年ほど卵だった私を拾って育ててくれたが、とうとう仕事を探せと言われてしまった。
「お前は見た目を人間にできても種族はドラゴン。そこらの男と結婚という逃げ道はないんだ」
どうやら私はドラゴン界から追放されているらしい。
なので嫁の貰い手が皆無である。
「ドラゴンにできる仕事ってなによ」
「ドラゴン由来のエレメンタル力を生かす冒険者やドラゴン由来の知識力をいかした指導者だな」
指導者なんて私にむいているわけがない。
「それにあの少年を育てるには金もかかるしな」
私は17年ほど前、人間の赤子を拾った。
「ルイルさん!魚が釣れたよ!」
拾った赤子にファルと名付けたのはウィーズィだ。
近所では夫婦とまで噂されているが、爺さん母さん息子みたいなものだ。
「結婚といえば、ねえファル」
「なぁにーどうかしたルイルさん?」
彼は人間だしそろそろ恋をする年頃だ。
「いつ彼女連れてくるの?」
「彼女って家に連れてくるものなんだ?」
その反応から見るに候補はいるらしい。
「別に必ずってわけではないけど」
「ファルはまだママ離れ出来てないんだろう」
ウィーズィはファルをからかった。
「ちょやだなーウィーズィおじさん!」
ドアを叩く音がして、ウィーズィが開けた。
「ルイルというドラゴンの女がいるのはこの家か?」
男は人間の姿をとっているがドラゴンだ。
「領主サマがこんな寂れた魔法使いの家に何か?」
「先に名も名乗らず失礼。私はコルド=ヴィルグ・フィールドです」
どうやら彼は治癒の白きドラゴンの守護下で有名なヴィルグの領地を納める領主らしい。
「私がルイルよ」
「貴女は怒れる赤ドラゴンの末裔。故に私と結婚して頂きたいのです」