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落ちこぼれ二世の逆襲  作者: 竜胆千歳
第一章 働く事は難しい
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仕事が終われば普通の若者

説明回です

「ただいま、千榎ちか

「おかえり、ご飯食べてきた?」

「いや、食べてないから残った料理食べさせて」

 同棲している彼女の家に帰ると、疲れた体をソファーに沈ませた。彼女──千榎は夏木千尋なつきちひろの名で声優をやっている。写真を公開した時に可愛過ぎる声優としても話題になった花も実もある実力派だ。

 なぜそんな彼女が恋人かというと、幼馴染みで僕が高校2年の時に付き合った後から彼女が声優になったという事だ、僕は今21で千榎は19、付き合い始めて4年くらい経つ、ちなみに僕は早生まれなので、千榎とは3学年歳が離れている。

「もうそろそろこんなアナウンスが流れるかな、──球審は中上、塁審は一塁米沢、二塁大中、三塁篠宮、公式記録員は小林、以上になります」

 千榎がウグイス嬢の真似をした、ウグイス嬢は球団職員が担当している事が多い、ただ、僕の故郷名古屋の球団、中吉ワイバーンズの本拠地は声の仕事をしている人がやっているそうだ、だからまるっきりあり得ないという訳ではないけどね。

「ちょっとせっかく澪のためにサービスでウグイス嬢をやったのに、無視?」

「ごめん、綺麗な声だから聞き入っちゃって」



 母親が名づけた名前に、不満があるかと聞かれたらどちらかといえば凄くある、中上海なかがみうみ10人中10人が女性だと思う名前、それが僕の名前だ。僕と言っているが僕っ娘ではない、れっきとした男だ。

 僕の母親の名前はめぐみ、メグ母さんと呼んでいる、女子プロ野球が大分発展し、男子と戦える女性が増えた時代に男女平等と野球発展を目指して男女混合可能になった時の第一号がメグ母さんだ、3年目には不振の中吉ワイバーンズの選手兼任監督になりリーグ優勝6回、日本一2回を達成した伝説の名監督であり、首位打者・ゴールデングラブ賞などを受賞したもある名選手。

 しかし、幼い頃は体が弱かったらしく、プロ野球の疲労がたたったのもあって僕が小学生の頃に他界した。自分の体が弱かったのが子供に出るかもしれない、そういった不安から迷信に縋り、名前を女の子風にしたそうだ。そして双子の姉の名前がげん、女の子でげんというのもおかしいが僕と同じ理由で男の子風になった。さすがに成人してからははるかと読みを変えている。今はメグ母さんが所属していたワイバーンズの正捕手として活躍している。

「そういえば海って顔が可愛いよね、小さい頃女装していたけど、今もメイクしたら十分いけるよ、また高校の時に見たメイドさん見たいな」

「もう許してよ!」

 男の子が健康になるおまじないの1つに子供の頃は女の子の格好をして魔に狙われないようにするというのがあって、それもやらされた。小学生で止めてもらったけどね!

 僕達は生まれも育ちも名古屋だけど、現在2人で東京のマンションを借りて暮らしている。理由はいくつかあるが大きな理由は2つ、1つは千榎の仕事がやりやすくなるようにするため、やはり東京の方が仕事をやる上での利便性が高いからだ。もう1つは玄の仕事と被るから、仕事が中立公平が前提の審判というお仕事なので、実家に居るとあらぬ疑いを持たれてしまう。なので1人暮らしをと思っていた所で千榎の声優としての話が本格的になったのを機に、一緒に暮らすという事になった。

 ただ、同居している事は玄は知らない、玄と千榎の交流は続いていたので同居していると当然ながら僕の居場所もばれてしまうからだ、建前としては家が近いで通してある。もちろん、アドレス帳に玄の名前は載っていない。年賀状も暑中見舞いも当然ながら送られていない状況だ。一応千榎の家族と孝志たかしさん──父だが、仕事に就いた時に父と呼ばない事にしている──と孝志さんの再婚相手の早織さおり母さんには住所は教えてある。

「調査では、この行動を行ったものが56%とあまり差はなく……」

 最近仕事が増えてきて単位を取るのも大変と言っている千榎だが、成績評価B以上を常に保っている。僕も玄に勉強で負けたら勝てる所がないと思って、必死に勉強したおかげで学年1位を取った事もある、まあ高校と大学では全く違うけどね。

 僕がいてもあまり役に立たないので、夕ご飯の支度を始めた。今日の料理は簡単な鶏肉とトマトの炒めとコブサラダに中華スープ。千榎が下準備をしてくれたおかげで、とってもスムーズに出来た。

「千榎、ご飯出来たよ」

「ありがとう、海。いただきます」

美味しそうにご飯を食べる千榎を見ていると、なんだか幸せになってくる。黒く長い髪は地味な印象ではなく、むしろ華やかにも見えてくるし、整った丸顔で大きな猫目は、子供っぽいけど、背は高く筋肉質だ。ただ、締める所は締まっていて出る所は出ている。まあ、千榎が小学生の頃から好きだったから、そこら辺は気にしてないけど。

僕? ルックスは父親譲りで良い方だ、ただ、背は平均より上なのに、居酒屋に行くと年齢確認は必ずある。これが複雑で、何歳に見えるかと先輩に聞いてみたら、15歳と真顔で答えられた。実年齢より7歳下ってどうなんだろう……。

「今度の休みは、海のゴスロリショーをしてもらいたいんだけど」

「頼むから休ませて……」

千榎は年下だけど、結構無茶ブリをしてくる。やれ女装しろとか、やれ昔練習したドラムしろとか、叩きながら歌を歌えだとか……僕は一応プロ野球審判なんだよ?

「じゃあ、今度の休みはお家デート?」

「出来ればそうしたいけど……スタジオにでも行く?」

「うん、海のドラム特訓だからね」

「頼むから休ませて……」

腰とか膝とか休ませたいのに、なぜにそこに負担をかけさせるのか……まあ、野球以外の千榎と共通の趣味がセッションなんだけれども。

「それじゃあ、シーズン中だし、5時間で後は鍼灸で治療コースね」

シーズンオフだったらどれだけやるんだろう……考えたらダメな気がしてきた。

そんな他愛のない会話をしながら、美味しいご飯を食べながら、千榎と楽しい時間を過ごした。

次はプロ野球審判の一日を書きます。

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