提案
「過去が変わってる? そんなわけないじゃないですか」
十二月十二日。みんなで学校をさぼって、ヒトミカの家に来ていた。
シャンデリアの明かりがテーブルの上のお茶に反射。呆れ顔のヒトミカを照らしていた。
ヒトミカはそう言うと、舞香たちを諭すように話し始める。
「いいですか? 私たちは時間を管理しているんです。舞香さんも知っている通り、過去に侵入者が現れれば、召集がかかります。でも、昨日のその時間、召集はありませんでした。これがどういう意味かわかりますね? それに、仮に召集があったとして、私たちが過去改変を許すわけがないじゃないですか」
ヒトミカに昨日のことを話した舞香は、ヒトミカにそう言いくるめられ、頬を膨らませる。
舞香の前にある湯呑に立っている茶柱が舞香の感情を表すように揺れる。
「子供みたいにすねたってだめです」
子供のヒトミカにそんなことを言われてしまう。むっとして、さらに舞香は頬を膨らませるが、実際、ヒトミカの言う通りだった。
しかし、ヒトミカに反抗したのは意外な人物だった。
「可能性ならあるよ」
そう言ったのは、京一だった。
京一は、目の前に置かれたお茶に息を吹きかけ必死に冷ましていた。入れてもらってからもうだいぶ時間が経つのだが、まだ熱いのだろうか?
「どんなですか?」
ヒトミカが問う。
京一は、慎重にお茶を口に運び、熱かったのか、顔を歪ませて舌を外気に触れさせる。
マイペースな京一にヒトミカはいらだちを覚えていた。
やがて痛みが引いたのか、京一は舌をひっこめ、答える。
「例えば、今の時間よりずっと先、未来の侵入者が過去を変えたとかね」
京一はドヤ顔を見せるが、しかし――
「それはありえませんよ。だって、未来には、未来の時の守り人がいるはずですから。……それとも、まさか未来の守り人が過去改変を許したっていうんですか?」
ヒトミカもすぐに矛盾点を見つけたようだった。
極端な話、一分後に召集があったとしても、一分後の舞香たちがいるはずだった。つまり、京一の言っていることは成り立たないということになる。
「おいおいそんなに攻撃しないでくれよ。興奮しちゃうだろう?」
……無視。
「まあ、可能性の話だよ。その可能性もあるってだけだ。それに、過去が変わったことによって舞香ちゃんが殺されるという未来が変わったかもしれないだろう?」
京一は大袈裟に手を広げて話を終える。
ヒトミカは「ぐぬぬ」と唸っていた。どうやら、何も言い返すことができないらしい。
そして、今度はヒトミカが子供みたいに(子供だが)頬を膨らませる。
「わかりましたよ。私の負けです。……じゃあ、早急に原因を解明しなければなりませんね」
ヒトミカの言葉に京一は頷く。
「では、今から行きましょうか?」
「どこに?」
京一が訊ねる。
「もちろん、現場にです」
三人のどよめきを代弁するかのように、舞香の湯呑に立っていた茶柱が倒れた。
次回、一年前の通り魔事件の現場に行きます。




