ゴーレムハート オープニング
人形の頭。
樹皮を束ねた左足。
木の枝の腕。
右目の中には、瓦礫から拾った綺麗な小石の瞳。……それから、人間の心臓。
残されたものを順に数え上げたあと、ゴーレムがちょうどいいかもしれない、と彼女は考えた。新しい名前のことだ。人形は壊れてしまったが、心臓は生きていた。ずたぼろの人形の欠片を集めて、足りない部分は彼女の愛する城をかき集めて取り繕った。
(立てるかしら……?)
ゆっくりと、身体に力をいれていく。人形のまま残されていた右足が、最初に反応した。彼女は少し不安に感じたが、じきに他の四肢も上手く動かせるようになり、とうとう彼女は立ち上がった。
白髪城が崩れ去ったあとの廃墟を歩く。右足と左足から違う足音が聞こえてくる。不思議な気がするが、悪い気分ではなかった。しばらく気ままな散策を楽しんだあと、彼女は目的のものを見つけることに成功した。
倒れていた男に近づいて、跪く。声は同じだから、気づかれない心配は不要だろう。
(ねえ、生きてる?)
「もうすぐ死ぬ」
彼は口の端から血を流したまま返事をした。嘘ばっかり、と彼女が言うと、しぶしぶといった体で瓦礫の寝台から身を起こす。
「で、おまえは誰なんだ?」
(そうね……とりあえず今はゴーレムでいいわ。あなたは?……ふうん。震える巨木の音みたいな名前ね)
そう言ってゴーレムは身体を揺すった。
了




