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world death(世界殺し)  作者: 煉
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プロローグ

「まけたみたいですね・・」


夜、廃墟に2人はいた。

 

あたりを気にする一人の「男」は帯刀された小刀を、隣にいる「少年」に手渡そうとした。


だが、


「いらないよ。そんなもん」


「・・しかし、護身刀を持たなければ・・」



「少年」は懐からタロットカードを引き抜いた。



「!」



目に見えない速さで、「男」を襲おうとした人影の喉を


刃が引き裂く。



「あ・・・」



後ろに倒れる人影を眼に、「男」は唖然とした。




「た、助かりました。百夜」


その声に答えるよう、百夜が促した。


「油断するなよ?今だって数千人の奴らが、俺らを狙っているんだ」

「・・・数千人」





「何だ?今更 怖じ気つ”いたか?」


眼光が「男」を貫く。




少年の・・百夜の姿が、月明かりと共にはっきりと現れる。




切れ長の目、黄がかかった緑の髪、そして誰もが圧倒される存在感の象徴。


「彼」自身。




「世界は俺を殺したいのさー・・・・桜花」





世界は、2つ存在する。



1つは「文明」の成り立つ「科学の象徴」の世界であり、

夢や未来に対する希望が溢れ、そして「戦争」がどこかで起こる汚れた世界。




1つは「人間」の存在が「すべて」であり、

自分がやりたい事、欲しいものを手に入れられ、そして「憎悪」に溢れる汚れた世界。




どこか、似通っていて

どこか、違う2つの世界。




1つの世界は「発展」にすべてを注ぎ、そのために「殺し合い」の結果を招いた。

1つの世界は「人間」にすべてを注ぎ、そのために「憎しみ」を生んだ。




同じで有、「対極」。




世界はそうでなければ存在しない。

 



そして、




世界にはルールがある。




1・世界の時間の流れは違う事。


2・世界を平等にはしていけない。


3・世界に干渉してはいけない。





このルールで、特に3は非常に重要である。


もし、1つの世界がもう1つの世界に干渉してしまった場合には・・・・・・・。





ドサッ。





「何・・・あの人達・・っ」


部活帰りであろう女子高生は、カバンを落とした。




・・・人が、殺された。


しかもカードで首が切れた。





物陰に隠れながら彼女は殺した本人達を見つめた。



(・・まだ中学生ぽい奴と・・・隣は高校生の奴かしら・・)


恐怖に震える手に、なんとか携帯を持つ。




(・・早く・・連絡しないと・・!)




「・・・警察に?」




穏やかな良い声が、彼女に問いかける。




「な!?」




鋭い眼光の少年が、自分を見ている。


まるで、見ていた事を最初から知っていたかの様に・・。




「ねえ、警察に電話するの?」





「っつ!?」



彼女は後ずさる。




百夜は「あらあら」と呟いた。





「そ・・そうよ!警察に連絡する!!」




「・・逃げないの?根性座ってるね」




別に根性が座っている訳でもない。

怖くて、足が動かないのだ。

どうしようもなく怖く、危ないと分かっているのに足が拒否する。



「逃げれない」と。





「ふーん・・。電話するなら電話すれば?」


「・・・!」



彼の超然とした態度に、指まで動かせない。




その時、




「あっ」




携帯が2つに割れた。




「・・・・・!」




百夜が何か感じ取ったらしい。


2つに割れた携帯を取り、それを女子高生に渡すと彼女の耳元に囁いた。





「・・見逃します。早く逃げなさい」



彼女は桜花の顔を見る。


女性の様な端正な顔だった。


袴を纏い、長い髪を後ろに1つ束ねている。




その2人が並ぶ姿は、あまりにも神々しく

この世のものと思えなかった。




そして、同時に眠気が迫り来る。

目を開けていたいのに、眠気がそれを許してくれなかった。




「・・・貴方達・・何者?」




「・・・・この世界の違う世界から来た者。


・・・・・・・あんたに関係無い。」




気がつくと、自室のベッドにいた。





「晶ー?起きたの?」


母の声がした。


全部・・夢だったのだろうか?


「晶、今日近くの売買中のアパートの近くで人が殺されたんだって。

危ないから違う道を通りなね」




・・・・・夢、じゃない!




千里晶は制服に着替えると、玄関に走り出した。



「晶、ご飯は?」


「いらない!」



走り出し、昨日近道に通ったアパートに向かう。



まさか、だと思う。



「!!」



重大な事を思い出した。




カバンの中の、携帯。




もし2つに割れていれば・・それは「現実」の証明。




「・・・・・うそ・・・」





               夢、じゃなかった。





そして本当の悪夢は、これから訪れる。




黒板に書かれる文字。



名前。



「現実」の証明。




「闇鈴百夜です。よろしく」




その時も、彼は不敵に笑った。


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