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第一部 第一話          第一部 始

 暗闇の中、『シュッ』という音と共に、小さな明かりが灯された。

 マッチをもつ細長い指がゆっくりとローソクに火を移す。

 そのゆらめきは室内の微妙な空気の流れが演出したもの。


 ローソクの灯りが、ベッドに腰掛ける一人の少女を写す時、

 少女の輪郭が奇妙に揺れた。


 絵画の中の世界・・・だが、少女の微かな息遣いだけが 

 現実感を与えている。


 壁にかかる大きな鏡にいるのは虚構のもう一人の少女。

 少女は鏡にむかってゆっくりと手を差しのべる。

 ・・・手の平が合わさった。

 さえぎるのは永遠に隔てる鏡の壁・・・。

 でもお互いの温かい体温が伝わり不思議な想いが伝わる。


 少女が白いワンピースの背中のファスナーをゆっくりとおろすと、

 スローモーションのようにワンピースが足元へすべりおちた。

 薄いピンクのブラジャーのフロントホックがパチッと鳴ると

 美しい乳房があらわれた。

 少女はそこに他人の目があるかのように両腕で乳房を覆いながら

 ブラジャーを両腕から抜き取りワンピースの上に置く。


 細く引き締まったウエストまである、白いパンティストッキングを

 太腿まで引き下ろして片足づつ抜き取った。

 ヒップは小さいながらもスタイルの良さを引き立てている。

 身体に残った唯一の薄いピンクのパンティを

 脱ぎ去り、小さく折りたたんでブラジャーの上に置いた。


 全裸となって鏡に向かい合う少女・・・形の良いバスト、 

 細いウエスト、そして、小さいながらも肉感的なヒップ。

 しかし、その股間にはひっそりと息づく女性のものと

 女性には在る筈のない男の物があったのだ。


                ★


 小川智弘は25才にもなっても、

 声変わりもしていない華奢な身体の孤独な青年だった。

 有名進学校から国立の某有名大学に進んだ、

 いわばエリートの卵だったのだが、

 いくつもの優良企業の就職試験はことごとく落されていた。

 成績は抜群だったのだが面接試験で全て駄目になっていたのだ。

 ボソボソとした小さな声でしか話せない智弘に、

 「君、もっと大きな声で話さないか!」

 と面接官に怒られると余計に身体が震えだし声が出なくなる。

 これではいくら成績がよかっても就職試験に通るわけがない。


 大学の教授がそんな智弘を見るに見かねて、

 大学のOBがやっているコンピューターのソフト会社を紹介した。

 対人間だとどうしようもない智弘だったが

 コンピューターを相手にすると天才といっても良い。


 智弘はすぐに頭角を現し、

 智弘の開発したソフトが世間の評判を得たのは

 入社後、半年たった頃である。

 そのソフトのおかげで会社の業績はグンと伸びた。

 周囲の智弘を見る眼は変わったが、相も変らぬ人間恐怖症・・・

 コンピューターだけが自分らしさを出せる相手だった。


 智弘をこんなに暗く歪んだ性格にしてしまったのは

 智弘の育ってきた生活環境と共に、

 智弘自身が抱える大きな秘密に他ならない。


 だがそんな智弘を泥沼のような生活から一変さす、

 ある出会いが待っていようとは・・・・・・。


 或る日、智弘を名指しで週刊誌の記者が取材に訪れ、

 智弘は拒否したが社長に半ば強引に応接室に連れて行った。

 待っていたのは一人の若い女性記者だった。

 女性記者は社長に引っ張られるように入ってきた

 智弘の顔をじっとを見ると

 「あっ」

 と小さく叫び声をあげて立ちあがった。

 その様子に社長は

「なにか?」

 と不信げに記者を見つめる。


 「いいえ、何でもありません。失礼しました。

 それでは、この方が?」

 「そうです。彼が小川智弘。我社のホープです。ただ・・・」

 「ただ、なんです?」

 「彼はなにぶん人と話すのがあまり得意ではないので・・・

 まあお手やわらかに」

 と苦笑いしながら部屋を出て行こうとする。

 「あっ、社長」

 「なにかね。もう、君は子供じゃないんだからこれぐらいのことは

 一人で対処したまえ」

 と応接室から出て行ってしまった。


 智弘は立ったまま相手の顔が見ることが出来ず、

 下を向いてモジモジしている。

 「フフフ」

 と含み笑いが聞こえた。 ハっと顔を上げると、

 キリっとした女性記者の美しい顔が笑っている。

 「ねえ、座りません?」

 「あっ!・・す・すいません・・・」

 と智弘は慌てて座ろうとしたがイスからひっくりかえりそうになる。

 その様子に女性記者の笑い声が応接室に響きわたった。

 智弘にはまるで針のムシロの上に座ったような、

 落ち着かない時が過ぎていく。

 女性記者からどんな質問を受けどんな答えをしたのか

 全く覚えていない。


 いきなり女性記者がパタンとメモしていた手帳を閉じた。

 その音にビクンと飛び上がった智弘の様子を可笑しそうに見ながら

 「小川さん。これじゃあ取材にならないわ。 

 よかったら場所を変えません?」

 女性記者・・・もらった名刺には『講文社編集部 早瀬理沙』

 と書かれてあった。

 ・・・がメモを智弘に渡して部屋を出て行ったのさえ

 気づいていない。それほど自分を見失っていたのだ。


 智弘が自分を取り戻したのはどれぐらい時間がたっていたのだろう。

 応接室を飛び出して女性記者を追ったが

 その姿はもうすでにどこにもない。

 メモには今日の待ち合わせ時間と場所が書かれてあった。


               ★


 待ち合わせの喫茶店で早瀬理沙に取材を断ろうとした智弘だったが

 少しの時間だけだから・・・と言って腕をつかんで放してくれない。

 女性と腕を組むなんて生まれて初めてのことだから

 真っ赤になってしまう。

 その様子が可笑しいと又、理沙が明るく笑った。


 どこをどう歩いたろう・・・理沙に連れて行かれたのは

 繁華街から少し離れた雑居ビルの地下だった。


 『会員制』という白い札が貼ってある木製のドアを開けると

 室内はカウンターとボックス席が二つあるだけの

 小さなスナックだった。

 カウンターに二人並んで座ると

 着物をきた女性がおしぼりを持ってきた。

 「理沙ちゃん、今日は早いのね」

 「ええ、ママ。今日はママにぜひ合わせたい人がいてね。

 連れて来ちゃった」

 「合わせたい人?」

 「ええ」

 といって俯むいていた智弘の度の強い眼鏡を

 横からスーっとはずしたのだ。

 「あっ、なにを・・・」

 理沙の手から眼鏡を取り返そうとしたが、猫のように素早い動きで

 スツールから降りカウンターの中に入ってしまった。


 「あっ!・・・さ・沙希!」

 という驚愕の声がボウとした智弘の視界の中から聞こえてきたのは

 そんな時だった。

 「ね、よく似てるでしょ。私も今日初めてあったときは

 腰を抜かすほど驚いちゃった」

 と理沙の声が聞こえる。

 しばらくは二人で何やら小声で話しているようだったが

 「ごめんね」

 と声がしてくっきりとした視界が戻された。

 「ごめんなさいね。理沙ちゃんがいけないことをして」

 とママが謝ってきたがなぜか目が赤く染まり濡れている。


 しばらくは三人で当たり障りのない会話をしていたが、

 4~5人の女性客が入ってきてのをしおに

 ママは他の客のところに去り、

 理沙は昼間の取材の続きを再開した。

 今度は口当たりの良いアルコールを潤滑油として取材をする。

 一流の取材記者といわれるの理沙の誤算は

 思ってもいない智弘のアルコールの弱さだった。

 途中でいきなり智弘が失神してしまったのだ。


               ★


 混沌とする意識が闇の中を蠢き、

 見えぬ己の手がまるで闇を彷徨うように、

 手探りで何かを求めている。

 そこに一条の光が闇を裂いた!、

 その光の粒子があやふやだった己の存在を知らしめ

 光自身が生き物のように彼を包み込み動き出した。

 光の中で母の胎内にいる赤子のように身体を丸め、

 そして、まるでその男という身体がサナギであったように

 背中が割れ、その中から美しい少女が姿を現す。


 抜け殻となった男の体は一瞬にして塵か埃のように消え去り、

 少女は折り曲げた両足を抱える体勢で

 ただじっと光の中で前を見据えていた。


 不思議なのは男であったときも、

 そして美少女として生まれ変わった今も

 その股間には男の隆々とした性器と

 その下方にひっそりと隠れるような女性の性器が

 息づいていたことだ。


 闇の中を飛び出した少女はそのまぶしさに目を細めながらも

 進み行く光に心を解き放ち・・・安心したように身をゆだねていた。


 ふと気づくと少女は一面お花畑のその只中、

 大きな木の下に座りこんでいた。

 少女がゆっくりと顔をあげると、

 お花畑の中をこちらにむかって歩いてくる女性を視線にとらえた。


 その瞬間、少女はまれて初めて表情を崩した。

 その女性に向かって微笑んだのだ。


 生まれたばかり・・・赤子同然の少女の横に腰を下ろした女性は

 少女をそっと抱く。


 (ようやく来たわね。楽しみに待っていたわ)

 (わたしを?)

 (ええ、そうよ。私が肉体を捨てたのもあなたを待つためよ。

 本当は自ら命を絶つことは絶対にいけないことなの。

 でも、わたしは天におられる大いなるお方が私を召されたため

 今まで天上界にいて修行をしていたわ)

 (修行?)

 (そう。苦しかったけどあなたのことを想い、

 なんとかがんばってこれたの)

 (わたしを?・・・どうしてです?)

 (あなたにはまだわからないけれど、

 女性となったあなたにはとてつもない力が宿っているの。

 あなたはその力を使って数々の使命を

 果たしていかなければならない・・・・それがあなたの宿命なの)


 (宿命?・・・・)

 (そうよ。でも・・・・あなたは女性としては生まれたばかりの

 赤子と同じ・・・だけど時はそんなに待っていてはくれない。

 だからわたしが選ばれたの)

 (その修行ってどういうこと?)


 (あなたの力に負けないようにするため・・・・

 そしてあなたの中に女性として同化するためよ)

 少女は驚いて女性を見た。

 だが女性は一瞬にして光輝き・・・

 そしてたくさんの光の集合体となって

 b少女の身体に吸い込まれていった。


 消える間際に囁いた女性の言葉はこの先の人生を

 大きく変化させていくことになる。

 (早瀬沙希・・・これがこれからの一生を

 あなたが女性として生き抜くための名前となるの。

 ・・・そして、この名前こそが私が私であった証なの。

 大事にしてね・・・・そして、ママと理沙姉をよろしく・・・)


 地が一瞬に消えてしまったため、

 再び闇にあるまどろみの中へ落ちていく・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ふと目が覚めたとき、少女に変わってしまった夢が

 まだ覚めきっていないのか

 目の前に自分の両手を持ってきてまじまじと見つめた。

 薄暗い中一条の光に映される光景・・・

 ホント・・・男らしくない手だ。ほっそりとして白魚のように白い。

 これが手だけならまだいいがこんなのが全身におよぶ。

 顔はいまはやりの小顔というか、

 睫が長く目がパッチリとして鼻筋がとおり唇が赤い。

 いわば女顔。

 でも自分は大嫌いではあるが”男”として生きている身だ。

 全く正反対のこの外見では、

 平穏にそっと社会の片隅で生きていきたいという

 自分の願いは叶えられそうにない。

 目が悪い事をこれ幸いに分厚いレンズのメガネで

 自分を隠そうとしているが

 これだけ世間に名前を知られてしまうと

 今日のような非日常的な騒動に巻き込まれてしまう。


 もう嫌!・・・そう思うと何だか自分が哀れに思えてきて、

 すーっと涙が頬を伝って流れてきた。


 その時だ。その涙を何やら白いものがふきとっていく。

 はっとして現実に戻るって周囲を見ると、涙でボウっとしているが、

 自分の両横から二人の女性が自分を見つめているのがわかった。


 つまり、ベッドに横たわった智弘をその両サイドに腰をかけて

 女性達が見つめていた

 二人の女性・・・雑誌記者の早瀬理沙とあのスナックのママだ。


 ママの手に白いハンカチが握られているのがわかるから、

 先ほど涙を拭いてくれたのはママに違いない。


 そのママが

 「智弘くん・・・・大丈夫?・・・」

 といって持っていたハンカチで涙を拭いてくれる。


 「大丈夫・・・でも、心の中がポッカリと穴があいているようで

 なんだかとても寂しい・・・の」

 つい正直に答えてしまった自分の心の中・・・・。

 どうしてこんなこと初対面の人に話せるのか・・・・

 それに思わず口についてしまう女性口調・・・そして、思考も、

 止めようと思っても、止まらない・・・パニック寸前になる。


 でもママが静かに智弘の隣に横たわり強く抱きしめてくれる。

 するとその温かさにスーっと落ち着きが戻る。

 だが今度は心の奥底からなにか熱い物が湧きあがってきて

 ママの豊満な胸の中に顔を埋めて泣き出した。


 自分の身体のどこにこれだけの涙があったのか。

 止め処もなく溢れてきて止めようがない。


 脳裏にいろんな思い出が浮かんでは消える。

 b学校でのいじめ、祖父母や親戚から・・・

 いや古くから男世界としてなりたっている

 村人達からのしつけと称する体罰・・・・

 つらくて包丁で喉を切ったこと。

 そのせいかいつまでも二次成長期がおとずれず、

 声が甲高い少女の声のまま・・・

 その声のせいでいじめがやまず、逃げるようにこの都会に出てきた

 母と子・・・

 その母にも大学入学時に去られてしまった。

 ・・・こんなことが次々と思い出される・・・・・・・。


 「ヒック・・・・ヒック・・・・・」

 ようやく涙が枯れたのか・・・

 それとも落ち着いたのかようやく泣き声が納まり、

 そのかわり思い切りママにだきつく。

 智弘の背中にはいつのまにか理沙が横たわっていて

 智弘の長い髪を束ねていたゴムをとり、

 ゆっくりと梳いてくれているのだ。

 それがとても気持ちがいい・・・・

 泣き声が止んだのもそのせいもあるのかもしれない。


 理沙がベッドの頭の上に置かれていた水差しからコップに水を注ぎ

 ひとくち口に含んでから智弘の口に近づいてくる。

 そっと唇が合わさると智弘の薄く開いた唇の間から

 理沙の体温を含んだ水が、

 少しづつ泣き疲れた智弘の口内に流れこんできた。

 初めてのファーストキス・・・だが、そんなこと考える余裕もなく

 「ゴクッ、ゴクッ」

 必死に飲みこむ水はなぜか甘く、

 ピーチのいい香りが口内に広がった。


 喉の乾きが収まりやっと落ち着くと 

 今のファーストキスのことが思い出され

 なんだか強烈な恥ずかしさが襲ってきて

 再びママの胸に顔を埋めてしまう。


 「ねえ・・・どうしたの?・・・・ねえ・・・・・」

 と智弘のこの行動に驚いた理沙が肩に手をかけて

 後ろを振向かせようとする。

 肩と腕を振ってその手を離そうとする智弘・・・・。

 全く・・・こんなこと大の大人の男がする行為ではない。


 「嫌!・・・・理沙姉の意地悪!・・・・」

 こんな声が、理沙の耳に聞こえてきた。

 もっと強くママにすがりつこうとする沙希。

 その二人を引き離そうとする理沙・・・・・。


 どうしてそんなことをするのか・・・・・といえば

 理沙の驚いた目をみれば推察出来るだろう。


 「さ・・・・沙希!・・・・沙希なの?・・・・」

 驚いた理沙の声に智弘・・・・いや、これは沙希だ。

 ずっと想い続けてきた。

 忘れるなんてできっこない。

 その声・・・・その表情・・・その言い回し・・・

 ちょっとした身振りから懐かしい想い出が駆け巡った。


 早瀬沙希・・・もう立派な女性として理沙やママの目の前にいる。

 目覚めてからどんどん変わっていくのを見つめる二人。

 この少女の男から女への変化は沙希がいなくなってから

 空虚な日々を暮らしてきた

 だが、こうして沙希が幸せと共に帰ってきたのだ。


 沙希はママの胸から顔を離し、理沙のほうに振向くと

「理沙姉!・・・もうそんな意地悪ばかりすると

 相手になってあげないからね」

 といってからママの顔を見てから

 「ただいま・・・・・ママ・・・・」

 といってママに思い切り抱きついた。


 「沙希・・・・ちゃん?本当に沙希ちゃんなのね・・・・」

 つい声を張り上げてしまうママ。

 頷いた沙希に

 「ああ~~・・・・」

 といって力強く抱きしめるママ。


 「神様!・・・・ありがとうございます。

 愛する娘を私の元に返してくださった・・・・」


 「痛い!・・・・ママ・・・・痛いわ・・・」

 ハッとして抱きしめていた腕の力を緩めるママ・・・・・

 沙希の実の母の早瀬真理だ。

 平安の御世から脈々と伝わってきた早瀬一族の長でもある。


 早瀬一族は女しか生まれない一族・・・・哀しい宿命だが

 現在まで日本中に散らばる女達は子孫を残すため、

 かりそめに男達と交わり、子をなしてきた。

 長である真理も、7人いる真理の妹達もそうだ。

 真理達の母だって・・・もう亡くなったが真理達を生むために

 いろんな男達と交わった。妹達と同じ父はいない。


 真理にしたってそうだ。理沙と沙希の父は違う。

 愛するのは女性だけ。母と娘とはいえ女と女だ。 

 一族の性の概念は一般とは違う。

 だから、沙希が死ぬ前までは毎夜のように母子達で愛しあってきた。

 時々妹達も交じることさえあった。

 でも沙希が死んでからはそれも無くなった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・・・

 ママと沙希は熱いキスをくりかえす。

 後ろからそれを引き離すようにして理沙が加わってきた。

 三人の熱い抱擁はいつまで続くのか・・・・・・・・・・ 

 そして・・・


 「ねえ、ママ!・・・・理沙姉!・・・・」

 「なあに沙希ちゃん」

 「どうしたの?沙希」

 二人の問い掛けに、沙希は三人の真中に身を横たえて 

 しっかり手をつないだ体勢で天井を向いて話しだした。


 「私の身体を見たでしょ」

 「えっ?・・・ええ・・・」

 「そうでしょうね・・・こんな格好をさせているものね・・・・・・

 で、どう思った?」

 という沙希は白いスリーインワンと白いショーツ、 

 そしてガーター用の白いストッキングというランジェリー姿だ。

 スリーインワンの胸元は少しだが谷間が見える。


 「化け物・・・って思わなかった?」

 沙希が二人に向かって少し哀しそうに言う。


 「化け物だって!・・・・そんなこと言われてきたの?沙希・・・」

 頷く沙希に

 「化け物だなんてとんでもないわ。・・・・私はね、沙希。

 とってもあなたがうらやましい。

 私もそんな身体だったら一族の宿命をかえられるかも知れない。

 ねえ、ママ」


 「沙希ちゃん。今の言葉であなたが背負わされてきた、

 苦しい運命がわかるわ。

 でもこれからはそんなこと絶対に言っては駄目よ。

 こんな可愛い沙希ちゃんが化け物だなんて言われてきた

 と思うと物凄く腹がたつわ。・・・・・あのね、沙希ちゃん。

  私達、早瀬一族に伝わる伝説でこんな言葉があるの。

 『男女両性を持つもの、けっして無下にすることなかれ。

 このもの早瀬の伝説の御子なり』」

 ママは楽しそうに話す。

 だってそうだろう、伝説の御子はこうして私の隣りで

 あどけない顔をして横たわっている。そう確信しているのだ。


 「だったら、ママ。今の交わりでママのお腹に

 赤ちゃんができたかも知れないわ」

 という沙希に

 「沙希ちゃん、望むところよ。

 沙希ちゃんの子供だったら素晴らしいわ。

 ねえ、理沙ちゃん」

 「そうよ。・・・これで私も母親か・・・

 そう思うとなんだかとっても嬉しい」


 男女両性具有・・・そんな身体を持ち、苦しい思いをしてきたが

 ようやく安住のすみかを見つけた

 小川智弘・・・・いや、早瀬沙希。

 今までの哀しみや苦しみはこれからの人生の糧となる。

 ではこれからの人生は?というと

 この物語を読んでいただく他あるまい。

今後の早瀬沙希の活躍はいかに・・・乞うご期待!というところだ。


       

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