最終章ニートチーター光の果て
気が付くと、裕太は、洞穴の中で寝そべっていた。
その洞穴は、細長くて前は、先が見えないくらい薄暗く続いていた。
裕太は、その細長い洞穴を前へと静かに走って行った。
何だ?ここは?
一体どこだ?
裕太は、困惑した様子で洞穴の中を突き進んだ。
すると、洞穴の地面が草原に変わった。
草原から様々な生命の鳴き声が聞こえてきた。花と草の香りも漂ってきた。
まるサバンナに生息する動物達の活力を表すかのようだった。
そして、草原の地面からコンクリートに変わった。
無機質なコンクリートに変わり、激しい銃声や爆撃音や戦車の車輪が回る音や戦闘機の飛ぶエンジン音も聞こえてきた。
人々の悲鳴も聞こえてきた。
まるで戦争の凄まじさを表すかの様だった。
そして、コンクリートの地面からマグマに移り変わった。
マグマは、熱くはなかったがドロッとした感触が肉球に伝わり少し走りにくかった。
マグマの煮え滾る音が響き渡り、生命が息絶えるような終わりを意味する音のようだった。
そして、マグマの地面から川の水面に変わった。
川の流れは、穏やかで走りながら駆け抜けていった。
川面を駆け抜ける度に水飛沫が舞い上がった。
川面は、まるで生命の静寂を表しているかのようだった。
そして、川面の地面から海面に変わった。
海面に変わると、荒々しい波が舞い上がり渦潮も巻き上がっていた。
海水が舞い上がり、洞穴は、海塩の香りが漂った。
まるで生命の復活を表すかのようだった。
裕太は、荒れ狂う波の海面の地面を必死で駆け抜けた。
そして、海面の地面が青々とした空に変わった。
宙に足が浮く感覚になった。
走りにくかったが何とか前足と後ろ足を交互に動かして前へと突き進んだ。
気持ちの良い風が洞穴を満たすように舞い上がるように吹いていた。
鳥の鳴き声も微かに聞こえてきた。
地面が空に変わると、裕太は、少し安堵した。
まるで自分の心が満たされているような感覚になっていた。
全身の力が抜けていき、力を必要としない聖域に入っていると思った。
すると、洞穴の壁に分娩室で生まれたばかりの赤子を抱く若い女性が映し出された。
その女性は、裕太の母だった。
裕太の母は、涙ぐんで裕太を抱きしめていた。
父も立ち会いをして裕太を抱きしめていた。
そして、映像が移り変わった。
今度は、葬儀の映像に変わった。
裕太の遺影が飾られた大きな祭壇の下の棺の中で両親が泣きながら抱きしめていた。
それを見ると、裕太は、心を痛めてしまった。
お母さん…、ごめん…。ごめん…。先に亡くなってしまって…。
裕太は、目から涙を流して声を震わせて呟いた。
本当に親不孝者だったな…。こんなバカな息子の為に泣いてくれる何て良い両親だったな…。
裕太は、そう思うと、胸が締め付けられるくらい切ない気持ちになった。
すると、空の地面から宇宙に変わった。
無音で生物もいない空間の宇宙に変わり、洞穴は、真っ暗になった。
すると、真っ暗の洞穴の少し離れた所から光が差し込んでいた。
裕太は、その光に向かって突き進んだ。
まるで光に吸い寄せられる様だった。
裕太は、その光に向かって激しく駆け抜けた。
光に近付くうちに、走るスピートが早くなっていった。
裕太は、目の前に広がる光に体当たりした。
すると、裕太の体は、まるで素粒子のように砕け散っていった。
チータだった裕太は、光となった。
そして、光になった裕太は、地球を飛び出して、宇宙の果てへと消えていった。
「動き続けるモノになってね…」
母の声がかすかに地球から聞こえてきた。
その声は、宇宙全体に響かせている様だった。
光になった裕太は、母の言葉の返事を返すように地球を照らすように輝かして、宇宙の彼方へと消えていった。
その時ヒヒの笑い声がどこからか聞こえてきた。




