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「本当にここであってるのか?」
3か月ほど船旅を続けて、あちこちの港で話を聞いて行きついたのは…小さな島だった。オレンジサファイアに纏わる女神の話、そして、オレンジサファイアが特産だというその島は、見れば見るほど何もなかった。
しかし、島に足を踏み入れたセドリックの足に1匹の子猫がすり寄ってくる。港で魚を求めてねだってくる猫に慣れていたセドリックだったが、ふと撫でてやろうとした猫が珍しい橙の瞳をしていることに気づいた。
「まぁ、ちょっと調べてみるか」
その後、セドリックはこの島で多くの猫たちに出会ったものの、島民たちはセドリックに懐いて腕に抱えられた橙の瞳の猫に関しては見覚えがないようだった。ただ、島では橙の瞳を持った女神を信仰しているという話は本当のようで、中には橙の瞳の猫を女神の化身だと手を合わせてくる島民もいた。
セドリックの胸元でリラックスした様子で過ごし、時には瞳を開けてちらりとセドリックに目線を合わせてくる猫。そうして猫のおかげもあって島民からも色々と話が聞けたセドリックだったが、突如として近くから女性の悲鳴のようなものが聞こえる。
セドリックの胸の中にいた猫が悲鳴の方向へと駆け出し、セドリックもすぐに後を追う。すると、人気のない島の奥の森の辺りで倒れこんでいる女性がいた。
「っ、どうしましたか!?」
慌てた様子で駆け寄ったセドリックは、「赤ちゃんが産まれそうなの」と話す女性の言葉から、妊婦である彼女が今ここで産気づいてしまったのだと気づいた。床には彼女が摘んだのであろうベリーが入った籠が転がっており、いくつかは落とした衝撃で潰れていた。
しかし、セドリックはついさっき、島民たちがもうすぐ女神さまを祀るお祭りがあるからと集会場に集まっていたのを見た。集会場はここから離れた先にある。そこまでセドリックが駆けていくにしても、彼女を1人残していくには不安に感じた。
「うぅううう…痛い。それに怖いの」
あまりの痛みにパニックになってしまう妊婦を目の前にするが、セドリックも出産を目の当たりにした経験はなく、戸惑ってしまう。メリッサだって結局は医者の処置があって子供を産んでいたからだ。
「お願い…助けて…!」
「と、とりあえずまずは呼吸を整えて」
縋りついてくる妊婦の爪が腕に食い込む痛みを感じながら、セドリックは落ち着いてもらおうと声をかける。しかし、彼女のパニックは更に増すばかりだった。




