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王宮を出たセドリックは、港で出会った商団の積み込みの手伝いをする代わりに船に乗せてもらうことになった。どことなく高貴な生まれだとバレたのか、途中で商団員から金品を脅し取られそうになったセドリックだったが、それもあっさりと剣で解決する。
セドリックにとってこうしたことは今までの旅の中でも何度もあり、すっかり慣れ切っているのである。それから数時間後にはついさっきのことは水に流して、船の上で酒を片手に笑い話をするセドリックと商団員たちの姿があった。
「で、俺はそこで美人な女神様にあったわけよ!とにかく美人で、胸が大きくてなぁ」
「んなの、酒でおかしくなったお前が見た幻覚だろうよ」
「それがそうでもないんだって、俺の手に…えっと、ほらこれ。この石が覚えもないのに握られていてよぉ」
商団員たちがそう話をする中、1人の男が手にしていたのは鈍く輝く石だった。ただの石ころじゃないかと馬鹿にする男たちも多い中、同じく石を見ていたセドリックが「オレンジサファイア」だと呟くと、男は「宝石なのか!?」と嬉しそうに口を緩めた。
「多分、その原石じゃないかって思うけど。俺も磨かれた宝石の方しか見たことないからわからないけどな」
そんなセドリックの言葉に男たちがまたセドリックの素性を怪しんだものの、セドリックが上手く交わせば、男たちも深入りせずにまた騒がしい酒盛りが始まる。一方でセドリックは、どうしてかついさっき目にした宝石が気にかかって、「酔いすぎた」と話して男たちの側を離れて船首の方へと移動した。
冷たい風が頬に当たり、酒で熱くなった体がゆっくりと冷えていく。
(ヴァンスがメリッサに送った結婚指輪が、あの宝石だった気がする)
セドリックはメリッサのお見舞いをしている中でジュリーとも知り合い、彼女から誘拐事件の中でメリッサの結婚指輪に勇気をもらえたと話を聞いていたのを思い出した。一時はメリッサを憎んでいたはずの彼女がどうして親友の立場になったのかが気になって、いくつか話をしたときに結婚指輪の話題が出たのだ。
船に乗った時は目的もなにもなかったセドリックだったが、少しだけ興味が湧いたオレンジサファイアについて少し調べてみることにした。




