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きっといつかは最高の旦那様  作者: 黒塔
エピローグ とある夫婦のお話
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その日、メリッサは3歳を迎えた双子たちと遊びに来ていたウィルと共にケーキを作っていた。本当はウィルと共にケーキをこっそりと作って双子たちにサプライズしようとしたのだが、どこからか匂いを嗅ぎつけた2人がキッチンにやってきてしまったのである。


申し訳なさそうにする世話係の侍女たちには大丈夫だと告げ、そのまま4人でケーキ作りが始まった。



双子のうちマシューは気弱な性格からびくびくとしていたが、姉であるルーシーに手を引かれてやってきた。いつのまにかルーシーがケーキに飾る予定だったベリーを口にしており、料理長が優しく注意しているのが分かる。それでも、怒られながらも隣にいるマシューにベリーをこっそり渡そうとする姿には、メリッサも笑みが漏れた。



「2人とも、そのベリーは今日のためにウィルが摘んできてくれたものなのよ。無くなったら森まで取りにいかなきゃいけないんだから、食べるのはもう終わりよ」

「ごめんなちゃい」

「いいもん、とりにいくもん!」


正反対の性格のマシューとルーシー。一方で口の周りはお揃いのようにベリーで赤く汚れており、側にいたウィルが自身のハンカチで2人の口元を拭いてくれた。



ウィルももうすぐ7歳を迎える。ウィルは父親であるローガンの木の加工の仕事を手伝っており、体も少しだけがっしりとしてきた気がする。もうすっかりお兄ちゃんに見える彼は、数年前にローガンから亡くなった母親の病気ことやメリッサが病気だったことも聞き、今では医者になりたいと勉強も続けていた。



「皆が準備しているパーティに間に合わせなきゃなんだから、ベリーを食べるのはそのくらいにしてね。それよりほら、ケーキの上にベリーを乗せて」



ウィルがそう告げると、懐いている双子たちは素直に従っていく。拙い仕草で手伝ってくれる双子の姿は本当に愛らしかった。




そんなときふと、メリッサは思い出す記憶があった。



『私が君の元を訪れた時、君がケーキを息子の口に無理やり詰め込んでいるのを見て、衝撃を受けたんだよ。不敬であることを恐れずあの子をたじたじにさせる女性なんて、この先現れないとね』



それは、メリッサがヴァンスの妻となることを命じられた時、陛下が口にした言葉だった。メリッサは当時の記憶をぼんやりとしか思い出せないこともあり、ふと目が合った料理長に聞いてみることにした。



「私がその場面を見たわけではないですが、誕生日パーティの翌日にヴァンス様がまだ新人だった私のもとにこっそりとやってきたことがありました。ベリーのケーキを馬鹿にしてしまったと話しており、その日準備していたケーキを作る様子をじっと側で見ていたのを覚えています。…そうですか、そのお相手がメリッサ様だったんですね」



料理長の言葉に、メリッサもようやく当時のことを思い出せた。


第1王子の誕生日パーティでヴァンスが起こしたトラブルに巻き込まれ、ワインを浴びることになったメリッサ。そのお詫びを求められ、パーティで食べたケーキが美味しかったからと領民たちに分けるためにもお願いしたところ、「そんなただのケーキなんて」と馬鹿にされたのだ。



ムカついたメリッサがケーキを刺したフォークを手に掴み、そのままヴァンスの口元に押し付けて無理やり食べさせようとしたのも覚えている。あのケーキは格別美味しくて、ヴァンスにもそれを分からせようと思ったための行動だったが…あの後は、両親が国王夫妻に必死に頭を下げていたはずだ。



(…私たちの政略結婚を両親が断れなかったのも、そんな理由があったのかしら)



「かんせー」

「わーお」



そんな中、子供たちの楽しそうな声が聞こえてきて、メリッサは過去のことを考えるのを辞める。午後から行われる子供たちの3歳を祝うパーティをするためにも、メリッサはまだまだやることがあるのだ。


…なにより、まずはクリームだらけの双子の身支度の準備から始めなければいけないだろう。



「さぁ、ケーキの次はあなたたちを綺麗に着飾らなくちゃ」


そうしてメリッサは、子供たちを脇に抱えて慌ただしく動き出す。




一方で、そんなメリッサたちの姿を見ながら、料理長は思い出していることがあった。実は彼には、ヴァンスのプライドを守るためにも口にしなかったことがあった。



『なんであいつは俺より体が小さいくせに、あんなに力が強いんだよ!それに王家に伝わるネックレスを断ってケーキを選ぶとか、意味が分かんねぇ』



我儘放題で王妃たちが頭を悩ませていた第2王子だったヴァンスが真面目に剣術を学び始め、王子としての教育も真面目に始めたのはあの事件の後からだった。使用人たちはそんなことから、ヴァンスを一夜のうちに更生させたメリッサのことを密かに”ベリーの少女”と呼んでいたのである。




そうして今回の結婚に関しても、実は王妃が密かに手を回していたことを…料理長は昔からの仲である彼女から聞かされていて知っていた。



「あの方にとっては、きっと運命の相手だったんでしょうね」



料理長は口元が緩むのを感じながら、今日のメインである少し不格好なベリーのケーキを見つめるのだった。






お話は一旦終了です。読んでいただき、ありがとうございました。


猫に関するエピソードを番外編で描きたいと思っているので、まとまり次第、更新させていただきます!




小ネタですが、章タイトルは縦読みできますので興味がある方はぜひ。

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