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(…寒い…寒すぎるわ)
メリッサが目を覚ましたのは、凍えるほどの寒さを感じたからだった。
重たい瞼をゆっくりと目を開けると、辺りが暗くなっているために夜だということがわかる。部屋には大きな暖炉が付けられており、薪が勢いよく燃えていることからもいつも通り部屋を温かくしてくれているだろうことがわかった。
しかし、体はなぜか氷水に浸かっているかのように冷たすぎる。
メリッサはそんな状況を理解して、もしかしたら自分は今日までの命なのかもしれないと自覚する。一気に不安が広がっていく中で、メリッサは徐々にパニックになった。そんなメリッサの不安を感じているのか、お腹の子も一際激しく動いている。
お腹にいる双子たちはまだ小さく、今外に出してしまうわけにはいかない。もう少し…もう少しでいい、彼らが外の世界でも元気で過ごせるまで、メリッサはお腹の中で成長させてあげたかった。
(それに…ヴァンスへの手紙だって、まだ半分しか書けていないわ)
メリッサはすぐさま誰かに助けを呼ぼうにも体は氷のように固まってしまい、物音を立てることすらできなかった。夜は家族やメイドたちが交代で見張りに来てくれるはずだが、今日はどうしては部屋には誰もいない。
(このままじゃ、私もお腹の子も…もう…。お願い…誰か…ヴァンスと私の子を守って…!)
そうして冷え切っていく体を一切動かせないまま、ぼろぼろと涙を流していたメリッサだったが…不意に、部屋の入口になにか揺らめくようなものを見た。そのまま扉が開き、誰かがメリッサの元へと近寄ってくる。
「メリッサ…?」
そこにいたのは、ランプを片手に部屋にやってきたヴァンスの姿だった。
「メリッサ、泣いているのか?」
どうして彼が今ここにいるのか、メリッサは理解できなかった。けれど、彼の顔を見た途端に安堵が押し寄せる。
自分から突き放しておいて、こんなこと自分勝手なのかもしれない。けれど、今ここに彼がいてくれることが凄く心強く思えた。
「不安にさせてごめん、メリッサ。俺はやっぱり駄目なんだ、君がいなきゃ。メリッサが生きていてくれなきゃ、俺の人生に意味がないから…」
ヴァンスがそうしてメリッサを抱きしめようと手を伸ばした時、メリッサのお腹の中で激しく動く子供の様子に気づいてくれたようだった。彼がハッとした様子でメリッサの体に触れ、体中がすっかり冷たくなっていることに気づいてくれる。
「医者だ!!医者を呼んでくれ!!」
メリッサがそうして最後に覚えているのは、慌てた様子のヴァンスの姿だった。次々に部屋に駆け込んでくる足音を聞きながら、メリッサの意識はゆっくりと落ちていく。
耳元では部屋にヴァンスがいることを驚くような父親の声や、すぐさま出産準備を始めるために指示を出す医者の声が聞こえていた。けれどメリッサは、ゆっくりと沈んでいく自分の意識に抗うことは出来なかった。
メリッサは手を強く握ってくれるヴァンスのぬくもりだけを感じながら、そのまま静かな世界に身を落としていくのだった。




