-4
それから数日して、今度はお見舞いにジュリーがやってきた。ジュリーはメリッサの姿を見た途端にハンカチで目元を抑えたものの、その後はすぐにいつものように声を掛けてくれる。
「今日はね、街で見かけたときにあなたの子供たちにぴったりの服を持ってきたわ。見て、こんなにも小さな帽子が付いているのよ」
そう話すジュリーは、メリッサの手に小さな帽子を握らせてくれる。ジュリーはそのままメリッサの指を共に握ってきた。
「メリッサ、この子たちはあなたが必要よ。考えても見て、あなたにそっくりの口うるさい双子が生まれて、誰が相手できるっていうのよ。騒がしくて、あちこち好きに走り舞わる子供たちを叱りつけられるのはきっとあなただけ。ねぇ、そうでしょう?」
ジュリーの言葉にメリッサは口元を緩める。すると、ジュリーもそんな反応に気付いたのか、にっこりと笑みを向けてくれた。彼女の少しつり上がった瞳が柔らかく揺れる。
「メリッサ、お願いよ。あなたが生きていてくれないと、私も心配で毎日のことに手が付かないの。それに、あなたが元気になったら夫婦円満のコツだって聞かなきゃ。あの遊び人のヴァンス様を射止めたあなたなら、どんな男性も夢中にさせる方法を知っているでしょう?」
つい最近、ジュリーもまた政略結婚で格上の男性と結婚した。まだメリッサが元気な時だったこともあり、メリッサは家族に支えながらも参加した結婚式でジュリーの綺麗なドレス姿を見ることができた。
ジュリーより一回り年上で、だけど優しそうな男性の姿。ジュリーが教会で愛を誓う姿は本当に素敵で、メリッサも気づけば頬を涙が伝っていた。彼女の幸せを…出来ればこれから先も傍で見ていたかった。
そして、メリッサにとっては新郎側の関係者として同じく結婚式に参加していたヴァンスの姿も、胸が苦しくなる理由の1つだった。彼は以前よりもずっと痩せたようだったが、人々の前では理想の王子として振舞っていた。
次期王であるセドリックの補佐をしながら真面目に政務をこなすヴァンス。遊び人だった頃と比べても国民からの評価も高まっており、一部の貴族たちはヴァンスの次の妻の座を射止めようと自分たちの娘を次々に紹介している様子もあった。
その場は家族が気を利かせて、メリッサの体調が悪化しないようにと早めに会場から連れ出してくれたが、メリッサは最後に一瞬だけ目があったヴァンスの視線を忘れられずにいた。ほんの一瞬だけ目があっただけなのに、彼の視線の熱さで胸が苦しくなったのを覚えている。
彼と別れることを決めたのは自分。それなのに、気持ちが揺らいでしまう。今すぐ彼に抱きしめられたいと、そんな気持ちを持ってはいけないはずなのに、体が自由ならばすぐさま彼の元に駆けつけて、傍による女性たちを皆、蹴散らしてしまいたいほどだった。
彼に愛される女性は自分だけだと…その場で叫んでしまえば、どんなに心が楽になっただろうか。
「メリッサ。これは友達のアドバイスとして聞いてちょうだい?…どんな事情があろうとも素直になるのは早い方が良いわ。今からでも遅くないのよ?」
全てを見透かすような瞳でこちらを見るジュリーに、メリッサの瞳にゆっくりと涙が滲んでいくのが分かった。その瞬間、ジュリーの瞳からもぼろぼろと涙が流れる。
「本当に、あなたに会いに来るたびお化粧がぐちゃぐちゃよ」
ジュリーの言葉に胸がいっぱいになるメリッサ。ジュリーはその後、色々と協力してくれることとなり、ジュリーに支えられながらゆっくりと、メリッサはヴァンスへの思いを綴った手紙を書くことができるのだった。




