それでも正月は終わらない
正月、終わりますね。
「待った?」
「はは。
いや、待ってないよ。1回も待ったことなんてない」
「お参り。
明日から学校なんて、嫌だな」
そう言って、彼女は手をつないでくる。
逃げたい。
でも、僕は手をはなさない。
正月、の終わり。
2026年1月4日、日曜日。
明日から、3学期。中3の3学期がはじまる。
なんとなく、今日で新年の感覚が終わりそうだ。新しい年になったことに対する、ワクワクとか。
だから、なのだろう。
「じゃ、お参りしようか」
僕は、微笑んで言う。
「わかった。おみくじとか引こうね」
微笑んで、返してくる。
それに対して、僕はうなずく。
「カステラだって。食べる?」
「キミが食べるなら、私も食べる。
口移しがいいな」
「ははっ。
ははっ」
え、マジ?
「おみくじ、何だった?」
「キミから教えてよ」
「末吉。微妙」
「じゃあ、これも末吉だね」
「いや、だいきt」
「末吉だね、ね」
「不思議空間で末吉に見える」
何か、何かアクションを起こさないと。
「あっ。
御守り、あるね」
僕は指す。
「そうだね」
それが? と言いたげな。
「恋愛の御守り、買おう」
笑顔で僕は言う。
恋愛の御守り。
これなら、この子も。
「僕たちは中学校を卒業したら離れるけど、この御守りでつながってるからね」
「…」
「好きの気持ちは変わらないよ。別々の高校に行っても」
「…」
そして、首を縦に振ってくれる。
ガッツポーズをしたくなった。
最後に、賽銭箱にお金を入れ、神様に願った。
『今回こそ、正月を終わらせて下さい』
と。
だが、
『明けましておめでとうございます!』
『いやー、2026年ですね。1月1日!』
テレビの芸能人たちは言う。
「…終わらねえ」
リビングで、僕は呟く。
これは、何回目の新年だろうか?
今は、2026年1月1日00時。
何がいけなかったのだろう?
カステラを口移ししなかったことか? おみくじで『末吉だね』と、すぐに言わなかったことか?
わからない。
けど、あの子は神様に願ったのだ、願ってしまったのだ。
『離れたくない』
と。
正月は、3学期の開始と共に終わる。
感覚、正月という感覚は、1月4日の日曜日で終わってしまうのだ。
3学期は、受験がある。
受験をし、合格すると、別々の高校に行くことになる。
だから、彼女は願ってしまうのだ。
離れたくない、と。
僕は、この正月、彼女を大満足させないといけない。
大満足させ、まあ、離れてもいっか、と思わせないと。
「終わらなかったんだけどね、今回も」
ありがとうございました。
ループする。




