イマジネーション
その日、優斗は寝れずにギターを掻きむしっていた。極限まで疲れていたし横になればいつでも眠れる気がした。けど、目を閉じるとマリアの陰が猛スピードで襲ってくるからだ。
明け方になって頭がムシャクシャして優斗は自慰行為をした。射精した後に好きな気持ちが変わらなければ本物の恋愛。昔、頭の悪い友達が教えてくれたことだ。マリアのこと。本気で愛しちまった。優斗は悶々として呪文を唱えた。
ゆっくり瞳を閉じながら、優斗は想像力を働かせていく。マリアとの未来やギタリストとしての成功をイメージしていく。
マリア。マリア!
薄暗い照明の下で。
ヒデキはマリアに話しかける。
「マリア。優斗は最近頑張ってるぞ」
「ホントですか?」
「ギター練習の合間縫って大学の勉強してさ」
ヒデキは嬉しそうにいう。
キャンドルがゆらゆら揺れていた。
「ワタシもユートに逢いたいです」
「んじゃ。そろそろ優斗にホントのこと話してもいいのか?」
(この場所は見覚えがある。ヒデキの自由が丘の実家だ。ヒデキの家は本当は金持ちなのに、長いこと僕に嘘をついて…。)
「ユートがワタシを必要としてくれるなら…」
(マリア。いつからこんなに日本語が饒舌になった?)
「優斗はいつでもマリアのことを想ってるよ」
(当たり前だろ。じゃなきゃ、あんな大嫌いな勉強を10時間もやるかよ!?)
「ユート。会いたい…」
(マリア!オレはお前だけを…!)
「おい!優斗?」
ヒデキはペチペチと優斗の頬を叩く。
優斗は目を覚ます。
「……。ヒデキさん?」
気がつけば優斗はヒデキの部屋にいた。




