悪魔のカクテルパーティー
ハウス系ミュージックの流れるライブスタジオにて、ヒデキの主催するパーティーが開かれていた。
「ナナミ。こっちこいよ」
ヒデキは真っ赤なソファーにあぐらをかいている。上半身は裸で左胸にアゲハ蝶のタトゥーがみえた。軽くタオルケットをかけているが、パンツは履いているだろうか。
ナナミはすでにキャミソール一枚の露わな姿を晒していた。
「でも…こんな場所じゃ」
ナナミは軽く抵抗した。
「いいから。こいって」
ヒデキは泣き止まない子供をあやすような甘い声でいう。
ナナミを横に座らす。ヒデキはナナミのキャミソールの上から胸に手をやる。ゆっくりと焦らしながらさすっていく。乳首をつまんで
「ナナミは本当に可愛いな」
耳もとに囁く。
「んっ…」
ナナミはヒデキの声に感じてしまった。その隙をみてヒデキは潤んだナナミの唇にそっと唇で触れた。ヒデキは舌を出すとナナミは口を開けて受け入れた。ヒデキが唾液を垂らす。
「なぁ。ナナミ。優斗に俺たちの愛を見せつけてやろう」
ヒデキが低い声でいう。
「ヒドイよ。ヒデちゃん…」
ナナミは恥ずかしくなり言ったが、ヒデキはさらにしなやかに強くナナミを抱き寄せた。パンツの上から優しくクリトリスを撫でる。
優斗は遠くからヒデキを睨むような目つきで見ている。
「おい、優斗。今日はマリアの相手してやってくれ。ナナミはダメだ。もうこんなに濡れてる」
ヒデキは近くにいたバリ人の女に金を渡した。バリ人の女マリアは
「アリガト。ヒデキ」
辿々しい日本語でヒデキに礼をいう。
マリアはおもむろに黒のドレスを脱ぐ。華奢な身体に似つかわしくない大きな胸を揺らしながら優斗のもとへ歩み寄る。
「カムヒア。ユート」
琥珀色した肌に相応しい甘くてスパイシーな薫りがしていた。
「……」
優斗は嫌悪感を抱いた。
「ボーヤ。ダイジョウブ」
マリアがそっと優斗を包みこむ。優斗は身体中の神経がビリビリと震えていた。
「はぁん。オーマイガー」
優斗は意を決してマリアを強く抱き寄せた。
ヒデキはそれを遠目で確認するとDJのアキラに目でサインを送り発破をかけた。
「ナナミ。コーラでいいか?」
ヒデキはナナミに声をかけた。
「コロナがいいな!」
アゲアゲな感じでナナミはいう。
「はいはい」
ヒデキは立ち上がって冷蔵庫からコロナを取りだした。隣の部屋の様子をのぞく。
「おい。ヤス!楽しんでるか?」
引き戸を開けると、ヤスがバックから激しく突いている最中だった。
「なつきちゃん。最高だぜ!」
「コロナ置いとくな!」
ヒデキのパーティーは明け方まで続いてゆく。仲間を退屈にさせない心配りは元チーマーのトップに相応しい。優斗は大好きなナナミを抱けなくて不満に思うだろうが、それもヒデキなりの計算だった。
優斗はやさぐれてる割には純粋で可愛らしい一面がある。ヒデキにとって優斗は可愛い弟分みたいなものだ。誰にでも抱かれてしまう恐れがあるナナミに、純粋な優斗はもったいない。ヒデキはそう考えていた。ならばせめて、性欲だけでも発散させてやりたい。
男の性欲は毒そのものだ。放っておけば誰かれかまわず抱きたくなってしまう。だからヒデキはわざとらしく商売女を優斗にあてがった。
「バンドマンで成功したいなら。それなりに覚悟しとけ」
ヒデキが優斗に言ったセリフだ。それがヒデキなりの優しさだった。まだギリギリ未成年の優斗にはヒデキの言葉の意味がわからなかった。