表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
一部 穴があったから入れてみた
9/68

9話 モヤを入れてみた

 ブランすでぃーは、真相なるものを語るという。

 真相ねぇ。なにやら陰謀の匂いがしますなあ。


 とはいえ、それを聞くのは後だ。その前にやっておくべきことがある。

 剣で刺された冒険者ジェイの治療だ。

 死にかけではあるものの、魔法をつかえばまだ間に合うに違いない。

 だが――


「ダメだ。血が止まらない」


 金級冒険者リックが治癒魔法をかけるも、ジェイの傷はふさがらない。

 デロデロと血を流し続けている。


 これはまずいな。

 マジでちょっと危ないぞ。


「なんでだ? どうして?」


 もう一人の金級冒険者も魔法をかける。

 だが、二人がかりでもだめみたいだ。

 ジェイの顔色はますます悪くなっていく。


「……魔剣よ。魔王を封印していたのは魔剣だったの」


 ボソっと呟いたのは取り巻き女子だ。

 魔剣がどうとか不吉なことを言っている。


「どういうことだ?」


 聞き返すリックの語気(ごき)は荒い。

 そらそうだ。

 明らかに時すでに遅しの情報っぽいし。


「魔剣は傷の再生を阻害するの。無限の再生能力を持った魔王を封印するには、それを使うしかなかった」


 なるほどなあ。

 ジェイはその魔剣でブッ刺されたわけか。

 それで治癒魔法がきかないんだな。


「おまえ、いまごろそんなことを!」

「ごめんなさい……」


 リックに怒られ、取り巻き女子は今にも泣きそうだ。

 うむ、ここは俺からもクギを刺しておこう。


「泣いて済む問題か! 泣いたところでジェイは帰ってこない」

「いや、まだ死んでないが……」


 リックのツッコミだ。

 いや、そこで冷静になるなよ。

 とりあえずムシ。話を続ける。


「おまえは情報を隠匿するばかりか、仲間を信じず疑い続ける。挙句の果てには殺そうとまでする。その結果がこのありさまだ!」

「でも、あなたはゆうとを――」


 取り巻き女子はナマイキにも言い返そうとする。

 しかし、そんなものは聞いていられないのだ。


「でもじゃない! 男のシリばっかり追っかけてるからそうなるんだ。恥を知れ、恥を!」


 取り巻き女子は完全に黙ってしまった。

 うつむいたまま目に涙を浮かべている。


 フッ、俺の勝ちだな。

 しょせん勇者の腰ぎんちゃくなど、この程度よ。


 ……しかし、ジェイはどうにかなんないかなあ。

 こんな下らないことで死ぬのはもったいないし。


 魔剣か……。

 呪いみたいなもんかな? 専門職ならなんとかなるかもしれないけど、街に戻らないとムリだしなあ。

 ――いや、待てよ。呪いって穴で吸いとったりできねえのかな?

 穴の力は未知数だ。まだまだ秘められた力があるかもしれん。

 やってみっか!


「てい!」


 ジェイのそばに穴を開ける。

 たのむ、穴よ。魔剣の呪い的なやつを吸い込んでくれ。

 お前ならできるはずだ。ふおおおおおお!


 その瞬間、ジェイの体から黒いモヤのようなものが立ちのぼった。

 それはみるみるうちに穴へと吸い込まれていく。


 これは!

 成功かもしれん。


「治癒魔法を!」


 リックを指さす。

 彼は驚いた表情で俺のことを見ていたが、すぐ我に返り治癒魔法を使い始めた。


「いいぞ、効いてるぞ!」


 ジェイの傷はみるみる塞がっていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ