56話 みな動きだす
街へと戻ってきた。
前方にはスカイフックで吊ったカルコタウルスがひしめいている。
その最後尾にはキャロもいる。
なんつーのか異様な光景だな。どうやって浮いているのか分からない巨大な牛たち。それにベッタリとしがみつくキャロ。
はたから見たら奇妙を通り越して気持ち悪いと思うんじゃなかろうか。
「キャロ。男どもを呼んできてくれ」
まあ、他人の感想より、自分たちのことだ。
キャロにひとつ頼み事をする。元借金取りたちをここに集めてもらうのだ。
やつらにも解体を手伝わせて、肉を焼いて屋台で売る。
頼んでいた屋台と入手と場所の確保が、わずか一日二日で出来ているとは思えないが、時間は待ってくれない。
ここは強引にでも進めていきたい。
「どこにいるニャ?」
ところがキャロは、寝ぼけたことを言う。
「それを考えるのもおまえの仕事だろうが。まあいい。宿にいなきゃ、屋台を買いに行ったか、売り場の調査に行ったかだ。順番に探してこい。とにかく人の流れがあるところを重点的にな」
「わかったニャ!」
キャロはしがみついていたカルコタウルスから飛び降りると、どこかへ走り去っていった。
身軽だな、あいつ。
しかし、宿を確認せんと飛びだしていったな。本当に任せて大丈夫かな。
というのも、ここは宿の中庭だ。中庭で解体して肉はひとまず部屋で保管しようと考えていたからだ。
まあ、フックで移動のさなか、窓ごしに部屋を見てたのかもな。それで部屋にいないことは確認済みだったと。
そう信じよう。さすがにそこまでバカだとは思いたくない。
「ベロニカ。とりあえず解体を始めといてくれ。俺はギルドに向かう」
「わかりました」
俺たちも地面に降りると、さっそく動きだす。
俺がギルドに行くのは解体前のカルコタウルスを売りにいくためだ。
フックを使えば四頭は持っていける。そうだな。二往復で八頭ぐらいは売ってしまおう。
その間、ベロニカはカルコタウルスの解体だ。
フックに吊ったままなら、やりやすかろう。俺がいなくてもフックの力は持続するからな。
分業ができて助かる。
――――――
「では、この金額でよろしいですか?」
「ああ、かまわない」
ギルドでカルコタウルスを四頭売った。担当者から金を受け取って宿へと引き返す。
また四頭吊ってこないとな。
手間だな。スカイフックで移動できればすぐなのに。
「あ、ボス」
テコテコと急ぎ足で歩いていたら、元借金取りの奴隷に出くわした。
これはラッキー。呼ぶ手間がはぶけたってもんだ。
「おまえ一人か? フラットたちはどうした?」
しかし、いるのはコイツ一人だ。
他のやつらの姿は見えない。
「フラットのアニキは屋台を見に行ってヤス。ほかのやつらは売り場の下見でさ」
なるほど。分担して動いているのか。いいね。悪くない動きだ。
しかし、思ったより進んでないな。屋台ぐらいは買ってて欲しかったが。
ちなみに、元借金取り、アニキ分の名前がフラット。
その子分たちは、レックにアコームにアイブルだ。
目の前のコイツがそのどれかは分からない。
名前じたいは覚えたんだが、顔と一致せんのだ。
もうちょっと会話して特徴を掴まないとな。三人とも似たような顔してっから。
「ずいぶん時間がかかってるな。屋台はいいのがなかったのか?」
その名前が一致しない子分奴隷に聞く。
このさい、屋台の見てくれはどうでもいい。
それに、なきゃないでなんとかなる。欲しいのは人手だ。
肉なんてもんは箱を積んで、その上で七輪で焼けばいいからな。
運ぶための荷台は一台あるし。
「それが、思ったより高かったんでさ。フラットのアニキは足元を見やがってって怒り心頭でしたゼ」
あ~、そうか。奴隷の首輪をつけてるからナメられたのか。
それで相場より吹っかけられたと。
そいつは悪いことをしたな。
「だったらムリに買わなくてもいい。必要なのは空き箱に七輪、網に炭だ。それだけ手に入れたら宿の裏庭に来るよう伝えろ」
屋台の入手は後回しだ。
まずはカルコタウルスの肉を売り切ることを第一に考えよう。
だが、もちろん、このままで終わらすつもりはない。
裏家業はナメられたらおしまいだ。あとでキッチリやり返しに行く。
エルミッヒ商会をナメたらどうなるか教えてやる。




