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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
55/68

55話 至福の時間

「エルミッヒさま、あ~ん」


 ベロニカに焼きカルコタウルスの肉を食べさせてもらう。

 うん、おいちい。この肉、相変わらずの旨さである。

 狩りはひと段落ついた。今は帰る前に栄養補給しているところだ。


「キャロ。喉が渇いた」


 地べたに座ったまま、口をパカンと開ける。

 俺は一歩も動かない。少し手を伸ばせば水が入ったコップに手が届くが、そんなことはしないのである。


「水すらも自分で飲まないのかニャ!?」


 キャロはゴチャゴチャ言うが、何の文句があるというのか。

 俺はご主人様らしく奴隷に仕事を割り振っているだけなのだ。


「極端すぎるニャ。このご主人様には、真ん中というものがないかニャ」


 キャロのおかげで、俺は奴隷に頼ることを覚えた。

 ならば全力で寄りかかってやるのが主人の勤めである。


「おしっこがしたい。誰かズボンを下げてくれ」


 飲ませてもらった水を口の端からタレ流しながら言う。

 飲んだら出す。これ当然のことね。


「とんでもなく、グウタラなご主人様になってしまったニャ……」


 キャロ君。発言には責任が伴うのだよ。

 覚悟を決めて俺のチンチンを引っ張り出してくれ。


「ちゃんと持ってないと自分にかかるぞ」


 ベロニカに肩を貸してもらい、キャロに放水の角度を決めさせる。

 この背徳感がたまらない。

 夜の営みのメニューに付け加えるべきだな。


「せめて食べ終わった後にして欲しかったニャ……」


 完全に出し切ってから収納させる。

 なんというか、いろんなものが満たされた瞬間だった。


「よし、キャロ。水を出すから手ぇ洗え」


 そう言って地面に向けてジャジャジャと水を出す。

 なかなかの気遣いだな、俺。

 奴隷の主人としての風格がでてきた感じだろう。

 出せる水の量だって、以前と比べて確実に増えている。回数もそうだ。

 少しずつだが、成長を実感できて嬉しい限りだな。


「俺が水出せてよかったな、キャロ」

「触らなかったら手を洗う必要もなかったニャ」


 言い返してくるキャロを鼻で笑う。

 メシ食わなければウンコしなくていい、ぐらいの愚かな発言だな。

 やってしまった事実は変わらない。それにどう対処するかが重要なのだ。



「ふ~、食った食った」


 その後も食べさせてもらい、もう満腹である。

 なんとも優雅な昼食だった。


「エルミッヒさま。ほほに汚れが」


 ベロニカがハンカチでふきふきしてくれた。

 たぶん肉汁がついていたんだろうな。

 なんとも主人思いの奴隷頭である。


「ベロニカ姉さんが、この男をダメ男にしているニャ……」


 キャロがなにか言っているが、聞く耳など持たないのである。

 これからしこたま働くんだ。

 ちょっとぐらい甘えたってバチは当たらないだろう。


「じゃ、そろそろ帰るか」


 気持ちを切り替えると、リュックを背負う。

 チンタラしてると肉が腐っちまうからな。

 とっとと帰ってみんなで解体しねえと。


 調子に乗って十五頭も狩ってしまった。これじゃあ切るのも売るのも大変だぞ。

 涼しい場所に保管すると考えても、数日で売り切らないとダメになってしまう。

 借金取りだけじゃなくて、俺たちも売り子をしなきゃならないだろうな。

 何頭かはギルドに引き取ってもらうか。


「スカイフック!」


 街まで続くヒモを出現させる。

 仕留めたカルコタウルスを、バンバンフックで街へと流していくのだ。


「キャロ。最後の一頭につかまれ。それで街までノンストップだ」

「切り替えの早いご主人様だニャ。ついていけないニャ」


 スカイフックなら、いくらでも吊るすことができた。

 普通のフックとトリプルフックで四つまでかと思いきや、回数制限なしである。

 これは集団戦にも役立つな。

 吊った敵はとりあえずスカイフックに乗せとけばいいんだから。


「おら、次が最後のカルコタウルスだぞ。乗り遅れたらお前だけ歩いて帰ることになるぞ」

「ヒドいご主人様だニャ。さては気持ち悪いって言ったこと根にもってるニャ」


 うん。チンコが生暖かくて気持ち悪いって言われた仕返し。

 よく分かってるじゃん。


「覚えてろニャ!」


 そう捨て台詞を残して、キャロはカルコタウルスと共に流れていった。

 面白いなアイツ。

 見てて飽きないから好き。


「じゃあ、俺たちも行くか」

「はい」


 左手でベロニカを抱き寄せ、フックで街へと滑って行った。

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