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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
50/68

50話 悩む俺と、やる気まんまんのキャロ

「な、なんでそんなに見るニャ!」


 キャロのことをジッと見つめる。

 能力を確かめたい。だが、吊れない。そのもどかしさが俺の心を焦がすのだ。


「さてはエロいことを考えてるニャ!」


 確かめたいけど、確かめられない。

 気になるけど、敵はいない。

 周囲を見回しても、目に映るのはキャロとベロニカだけなのだ。


「昨日あんなにしたのに、もうムラムラしたかニャ!」


 どんな、どんな能力なんだ。

 その力によっては、さらに先の展望が開けるかもしれない!


「やり方ぐらいは知ってるニャ。そこの草むらに行くニャ。アタシの魅力でメロメロにしてやるニャ」


 狩りに行商。金貸しに大商い。

 エルミッヒの名は思ったより早く、天下にとどろくかもしれない。


「ツガイになるニャ。ここから新しい一族をスタートさせるニャ」


 そうだ。エルミッヒ財閥を作るのだ。


「さあ、来るニャ。アタシが全部受け止めてやるニャ!」


 よ~し、キャロ。その心意気やよし!


「スカイフック! その力を俺に見せよ!!」


 俺はスキルを使うべく、力強くその名を叫んだ。

 だが、キャロどころか、ベロニカにも何の変化もなかった。


 ……あれ?

 おかしいな。まさかの不発か?


「スカイフック? アタシの名前はキャロニャ! 自分で言ってもう忘れたのかニャ?」


 う~ん。

 敵にしか作動しないとかかな。

 だったら、モンスターが出てくるまで待たなきゃいけないってことか?


「チッ、なんだよ。いまここで見たかったのに……」

「いまここで!? 道の真ん中で見たかったのかニャ? わかったニャ。恥ずかしいけど、ご主人様のためにガンバルニャ」


 が、ここで気がついた。なにやら一本のヒモが頭上を横に走っているのを。

 なんだこれ?

 ヒモは俺の身長よりやや高い位置で、山頂の方から、これまで歩いてきた街の方までズドンと伸びているのだ。


「脱いだニャ。遠慮ぜず、ズドンとくるニャ!」


 長く伸びるヒモの先を眺める。

 その先ははるか遠く、終わりが見えない。


「よく見えんな。奥はどうなっているんだ?」

「奥!? 開いてよく見せろってことかニャ? ご主人様はなかなかの鬼畜ニャ……」


 これまで縦にぶら下がっていたヒモが横にか。

 今までとだいぶ勝手が違うようだな。

 使い方を慎重に見極めないといけない。

 そう悩んでいると、ベロニカが肩をトントンと叩いてきた。


「あのエルミッヒさま。そろそろツッコんであげませんと、これ以上はさすがに……」


 うん、そうだね。ベロニカの言う通りだね。

 面白いから放置していたけど、これ以上は危険なことになりそうだ。


「そうニャ! つっこむニャ! はやくツガイになるニャ!」

「わかった、わかった。もういいから」


 キャロに服を着るようにうながすと、スキルの使い方について考え始めた。




――――――




 いろいろ調べてみて、もうひとつ気づいたことがある。

 ヒモ以外にも俺の手の甲のあたりから、かぎ爪のようなフックが一本でているのだ。

 このフックは引っ張っても抜ける気配はない。これはいったいどういうことなのだろうか。


 たぶんこの手から生えてるフックを使うんだろうな。

 空に走るヒモとセットなんだろう。

 もしかして、スカイフックってやつは敵に使うんじゃなくて、おれ自身に使うものなのか?


 冒険者は依頼によっては、高い山を登らねばならない時がある。

 そういう場合はロープを使うものだ。

 また、谷を越える時には、ロープを渡して滑り降りたりもする。

 それと同じか?


 頭上のヒモにそっと手を伸ばす。

 ちょうど生えているフックが引っかかる高さだった。


「試してみるか?」


 ちょっと危険な感じもするが、やってみたい気もする。 

 どうする? 俺。

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