50話 悩む俺と、やる気まんまんのキャロ
「な、なんでそんなに見るニャ!」
キャロのことをジッと見つめる。
能力を確かめたい。だが、吊れない。そのもどかしさが俺の心を焦がすのだ。
「さてはエロいことを考えてるニャ!」
確かめたいけど、確かめられない。
気になるけど、敵はいない。
周囲を見回しても、目に映るのはキャロとベロニカだけなのだ。
「昨日あんなにしたのに、もうムラムラしたかニャ!」
どんな、どんな能力なんだ。
その力によっては、さらに先の展望が開けるかもしれない!
「やり方ぐらいは知ってるニャ。そこの草むらに行くニャ。アタシの魅力でメロメロにしてやるニャ」
狩りに行商。金貸しに大商い。
エルミッヒの名は思ったより早く、天下にとどろくかもしれない。
「ツガイになるニャ。ここから新しい一族をスタートさせるニャ」
そうだ。エルミッヒ財閥を作るのだ。
「さあ、来るニャ。アタシが全部受け止めてやるニャ!」
よ~し、キャロ。その心意気やよし!
「スカイフック! その力を俺に見せよ!!」
俺はスキルを使うべく、力強くその名を叫んだ。
だが、キャロどころか、ベロニカにも何の変化もなかった。
……あれ?
おかしいな。まさかの不発か?
「スカイフック? アタシの名前はキャロニャ! 自分で言ってもう忘れたのかニャ?」
う~ん。
敵にしか作動しないとかかな。
だったら、モンスターが出てくるまで待たなきゃいけないってことか?
「チッ、なんだよ。いまここで見たかったのに……」
「いまここで!? 道の真ん中で見たかったのかニャ? わかったニャ。恥ずかしいけど、ご主人様のためにガンバルニャ」
が、ここで気がついた。なにやら一本のヒモが頭上を横に走っているのを。
なんだこれ?
ヒモは俺の身長よりやや高い位置で、山頂の方から、これまで歩いてきた街の方までズドンと伸びているのだ。
「脱いだニャ。遠慮ぜず、ズドンとくるニャ!」
長く伸びるヒモの先を眺める。
その先ははるか遠く、終わりが見えない。
「よく見えんな。奥はどうなっているんだ?」
「奥!? 開いてよく見せろってことかニャ? ご主人様はなかなかの鬼畜ニャ……」
これまで縦にぶら下がっていたヒモが横にか。
今までとだいぶ勝手が違うようだな。
使い方を慎重に見極めないといけない。
そう悩んでいると、ベロニカが肩をトントンと叩いてきた。
「あのエルミッヒさま。そろそろツッコんであげませんと、これ以上はさすがに……」
うん、そうだね。ベロニカの言う通りだね。
面白いから放置していたけど、これ以上は危険なことになりそうだ。
「そうニャ! つっこむニャ! はやくツガイになるニャ!」
「わかった、わかった。もういいから」
キャロに服を着るようにうながすと、スキルの使い方について考え始めた。
――――――
いろいろ調べてみて、もうひとつ気づいたことがある。
ヒモ以外にも俺の手の甲のあたりから、かぎ爪のようなフックが一本でているのだ。
このフックは引っ張っても抜ける気配はない。これはいったいどういうことなのだろうか。
たぶんこの手から生えてるフックを使うんだろうな。
空に走るヒモとセットなんだろう。
もしかして、スカイフックってやつは敵に使うんじゃなくて、おれ自身に使うものなのか?
冒険者は依頼によっては、高い山を登らねばならない時がある。
そういう場合はロープを使うものだ。
また、谷を越える時には、ロープを渡して滑り降りたりもする。
それと同じか?
頭上のヒモにそっと手を伸ばす。
ちょうど生えているフックが引っかかる高さだった。
「試してみるか?」
ちょっと危険な感じもするが、やってみたい気もする。
どうする? 俺。




