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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
42/68

42話 シンプルな答え

 ヒモは三本。

 しかし、フックはゴブリンにだけでなく、ベロニカにもついている。

 これは難問だぞ。


 ヒモを一本引く。それでゴブリンが吊り上がればいい。

 だが、ベロニカが吊り上がってしまえば?

 迫ってきたゴブリンにボコボコにされてしまうではないか!


 マズイぞ。

 そんなことで大事な手駒を失うなどあってはならない。

 どうすればいい?

 考えろ、考えるんだ。


 一番いいのはこのまま何もしないだ。

 ゴブリン二匹ごとき、ベロニカにとっては物の数ではないだろう。

 しかし、それじゃあ俺が成長できない。

 ゴブリンにトドメを刺すのは俺じゃなきゃいけないのだ!


 どうする?

 見ればゴブリンはもうベロニカの目前だ。


 ベロニカを失いたくない。

 だが、ゴブリンだって譲りたくない。

 むむむむ。これしかない!!!


「フン!」

「ギィギャッ」

「いだああ~」


 俺はヒモを全部引いた。

 ゴブリンもベロニカもみんな仲良く、ぶい~んと吊り上がった。


 これなら誰も傷つかない!

 ベロニカも無事だし、俺もコブリンを仕留めることができる。

 みなが幸せになれるのだ。


「いだ~いいい。鼻がどれちゃう~~」


 ふ~。さすがは俺だな。

 とっさにこの答えにたどり着くとは。


「なんで? 降ろして降ろして」


 ベロニカは吊られたまま、大きな声をだしている。

 安心しろベロニカ。俺はお前を守ってやれたぞ。


 ゴブリンをこちらに引き寄せると、そのまま命を刈る。

 そこでようやく、ヒモから手を離した。


「ぐえっ」 


 地面に落ちたベロニカはグッタリしている。

 すぐさま駆け寄る。


「大丈夫か!」


 声をかけるもベロニカはビクリとも動かない。

 ただ、わずかに開いた瞳で俺のことを見つめている。


「ゴブリンは全部倒したぞ。安心しろ」


 ベロニカの口がわずかに動いた。

 なにか言っているようだが、声が小さくて聞き取れない。


「なんだ? どうした?」


 口元に耳を近づける。


「おまえ、ぜったいにコロしてやる……」


 奴隷が反乱を起こした瞬間だった。





――――――





 反乱はほどなくして鎮圧された。

 わが、ガチ土下座の力によって。


 自慢の交渉術も不発に終わり、仕方がなかったのだ。


「ベロニカさん。ちゅっちゅするんで許してくれませんか?」

「そういうことじゃない」


 こうなのだ。

 なぜだ? 解せぬ。


 それだけじゃない。「ちょっと鼻が高くなったんじゃない? さらにカワイクなったよ」って褒めたら本気で首を絞めにきた。

 もう何を言っても聞き入れてもらえないのだろう。

 ほんとうに暴力的で困る。

 ステータスを見たら知力の値がいちじるしく低いのかもしれないな。


 まあ、そんなものは所詮(しょせん)すんだことだ。

 俺の興味はカルコタウルスがいったいいくらで売れるのかってことだ。


 すでに街に到着している。

 ギルドの買取カウンターの前で、今か今かと査定を待っているところなのだ。


「金貨82枚と銀貨12枚。そして、銅貨が16枚です」


 ぬお! なかなかの金額だ。

 ギルド職員の金額の提示に驚いた。


 以前いた場所と物価が微妙に違うので正確なところは分からないが、これはかなりの報酬ではなかろうか。

 ベロニカに確認する。


「どうなんだ? この金額?」

「まあまあですね」


 そう答えた彼女だったが、顔がニヤけていた。

 思ったよりも金額が高めだったのかも知れない。


「では、これで手続きさせていただいてよろしでしょうか?」

「うん。それでお願い」


 すぐさま了承する。

 どうせイヤだつっても他に売るアテなんてないしな。

 買取りなんてものは、ツテでもなければ商人と直接交渉してもボられるだけだろうし。


 ちなみに買取金額にはゴブリンどもの報奨金も含まれている。

 あと、自分たちが食べる分を差っ引いた、カルコタウルスの肉もだ。


 よ~し。これで多少は贅沢できるぞ。

 金を受け取った俺とベロニカは、ホクホク顔でギルドを後にするのだった。




※ちなみに、敵意を持ったら奴隷の首輪が反応しね~の? って疑問があるかもしれません。

 ですが、ベロニカは超怒っただけで、本当に殺そうとは考えていません。

 身を(てい)して助けようとしているのになんで! って感じでしょう。

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