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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
37/68

37話 レベル2ってなによ

「エルミッヒさま、あれです」


 ベロニカが指さすのは、麦の粒より小さな点だ。

 ここは小高い丘。遠くの草原を見下ろすかたちとなっている。

 点、ちっちぇ。生き物かどうかもよくわからん。

 なんでも、あれがカルコタウルスなるものらしい。


 今回の遠征の目的だな。

 じつは昨日はあまりにも満たされてしまい、すっかり忘れていた。

 まったりとした夜が明け、日の出とともに出発。山を下り、丘に登り、キャンプを張ったところで、今日はどんなチュッチュをしてもらおうかなーなんて考えていた。


 イカンイカン。

 こんなことでは先が思いやられる。

 本体ヨワヨワの俺は、奴隷でしっかりと身を固めなければいけないのだ。

 ベロニカのチュッチュの負担を減らすためにも、もっともっと金を稼がなければ。


 さて、このカルコタウルスだが、全身が青銅でできており、とても硬い。

 俺が一本釣りして、ベロニカがドテッ腹を切り裂く。

 それが、彼奴(きゃつ)を討伐するのに用意した俺たちのプランだったのだ。

 しかし――


「なんかいっぱい、いない?」


 そうなのだ。

 草原をウロウロしている小さな点は、うじゃうじゃあった。

 しかも、ひとつが移動すると、それに連れられ他のも移動するといった集団行動を見せている。


「ええ、カルコタウルスは群れで暮らすんです」

「ダメじゃん」


 ベロニカの言葉に思わず唇が尖んがらかる。

 おまえ、俺のフックは一匹しか吊れないのよ。

 あんなもん先頭の一匹を吊っても、後から来たやつらに踏み潰されるじゃない。


 が、そんな指摘はとうぜんベロニカも承知のようで、次に続く彼女の言葉に納得する。


「ええ。ですので、群れから離れたはぐれを狙うんです」


 あ、なるほど。だから、こうして高いところから観察しているのか。

 やるなあ。さすが銀級冒険者だ。


「でも、時間かかりそう」


 とはいえ、地道な作業になりそうだ。

 はぐれなんて、そうそう見つからないだろうしなあ。

 しかも、見つけても、そこまで距離をつめなきゃならんワケじゃろ?

 群れに気をつけながら。

 けっこう大変じゃない?


「ええ、数日がかりになるでしょうね」

「マジか!」


 サクっとやって、サクっと帰ろうと思っていたのに。


「ですが、そのぶん実入りも大きいですよ。一頭倒すだけで、通常の依頼の数件分になりますから」


 まあ、そうか。

 そう考えると、割りはいいか。

 しかも、ひとりで待つわけじゃないしな。

 昼だって夜だってさみしくない。やることだって、部屋の中か外かだけでさほど変わらんしな。


 それにフックの射程距離いかんによっては、群れでも吊れるかもしれない。

 遠くで吊ってこっちまで引き寄せればいいんだ。

 安全な位置で解体すればいい。


 問題はどの程度の距離で吊れるかだな。

 今の麦粒みたいな遠さではムリみたいだ。鼻をしっかり認識できる位置まで近づかないといけないんだろう。


 じゃあ、行きますか。

 ――おっと、そうだ。もう一個忘れていたものがあった。

 ステータスだ。

 チュッチュの最中にステータスとやらを眺めていて気づいたことがある。


〇ステータス

 名前 ローゼル・エルミッヒ

 職業 魔法使い

 LV 5

 HP 100/100

 MP 8/8

 ちから 10

 知力  30

 素早さ 10

 スタミナ10/10

 スキル 鼻フック レベル2


 初めて見たときと数字はまったく増えていない。

 むしろ、あるタイミングでスタミナが一気に減っていた。俺は寝転がっているだけなのに。

 これはアレか。放出したから? 

 ふははは、魔力かよ! とか一人で笑っていた。


 そのときなのだ。ふと気づいてしまった。

 『スキル 鼻フック レベル2』の文字に。


 レベル2?  あれ? こんなのついてたかな?

 なんじゃらほい? って感じだった。


 う~ん、いい機会だしベロニカに相談するか?

 冒険者としては俺より経験豊富だろうし。


 いや、でも、ステータスなんてものは知らないって言っていたしなあ。

 相談したところで分かるはずもないか。

 

 ……まあいいか。

 ちから10とかと同じで、吊れる強さが増したのかもしれん。

 頑張って荷物を運んだから成長したんだろう。

 ちからだって、鍛えれば鍛えるほど重いものも持てるようになるしな。


 よ~し、狙うはカルコタウルス。

 吊って吊りまくるぞ!

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