25話 仲間がひとり増えたのだ
どうやら女は冒険者側だったようだ。
ただ、俺が予想していたのとは状況が違っていた。
仲間割れだ。
売人が連れてきた奴隷を冒険者側が買おうとしてトラブルになったのだとか。
アホや。
なんでも、奴隷に関する法が国によってバラバラで、国境をまたいで取引ができないケースがあるのだと。
そこで、その国の冒険者を使って国内の取引きとしてしまうワケだ。
それを行っていたのがベロニカたち冒険者グループと、死んだ売人たちだ。
いや、なんかガバガバじゃね?
中での取引がよくて、持ち込みがダメとかも意味が分からんのだが……。
まあ、いいや。
そのへんは俺の知ったこっちゃねえ。
ここにも冒険者という職業があったこと。奴隷が違法じゃないこと。この二つが重要だ。
で、この仲間割れ、けっきょく売人側が全滅。冒険者側もベロニカを残して全部死んでしまったと。
ただ、奴隷は12人いたらしい。
死体が7つだったから、5人はどさくさで逃げている計算だな。
やっぱり生存者がいたか。でも、俺に危険はなさそうなので気にする必要はなさそうだ。
ちなみに、ご主人様不在となった奴隷ってどうなるんだろう?
命令するやつがいなくなるワケじゃん。
ちょっと聞いてみるか。
「ベロニカ。逃げた奴隷はどうなるんだ? 死んじゃう感じ?」
「いや、見つからなければ普通に生きていけると思う。首輪は契約者に敵意を向けられないようにするためのものだ」
なるほど。死にはしないし、意思も操られないと。
俺が知っているのと似たようなものだな。
「その見つからなければってのは?」
「首輪をしているとウソがつけない。ウソがつけないとこの世を渡っていくのは難しい。また、逃げ出した奴隷を捕まえれば賞金が出る。それ欲しさに奴隷商へ突きだす者も少なくない」
ほうほう。これも同じか。
誰とも関わらずに生きていけば大丈夫なんだろうけど、そんなことはムリだしな。
そもそも、逃げてもすぐ捕まるしな。
奴隷商は魔力を感知するアイテムを持ってる。
首輪にこめられてる主人の魔力を追跡するんだ。そうすりゃ簡単に見つかる。
どうせこれも同じなんだろう。
ふ~む。
冒険者といい、奴隷の首輪といい、元いた場所とかなり似通っているな。
ちがう世界に来てしまったようにも思ったが、案外近いのかな?
「それで私はなにをすればいい? まさか、身の回りの世話をさせるために奴隷にしたわけではあるまい」
逆にベロニカが質問してきた。
なんか吹っ切れたような印象を受ける。
いや、どうせなら冒険者のような生き方をしたいと思っているのかもしれないな。
戦いで命を落とすなら仕方がないと。
その心意気やよし。ただ――
「いや、身の回りの世話はしてもらうぞ。その上で俺の護衛もしてもらう」
奴隷だからねー。
護衛だけだったら、それこそ冒険者を雇えばいいんだし。
「そうか。重労働だな」
「そうだ。重労働だ」
まあ、自分のことは自分でするけどね。
できないことは、遠慮なくやってもらうつもりだ。
「身の周りの……世話か」
「なに? 不服なの?」
ベロニカはどうも煮え切らない様子。
ダメだぞ。そんなワガママは許さないぞ。
「いや、そんなことはないんだが……。ただ、あの、その……」
「なんだよ。ハッキリ言えよ」
ベロニカはやっぱりグジグジ言っている。
困るぞ。そんな優柔不断では。
「身の回りの世話というと、やっぱり夜の勤めもすることになる……のか?」
「当たり前だ」
間髪入れずに答えた。
アタリメ―だろ。何言ってんだおまえは。
そのために奴隷にしたと言っても過言ではないのだ。
「そうか、そうだな……。自分がこれまでしてきたことを考えると、とうぜんだよな」
「そうだ」
まあ、売人じゃなくても奴隷にしてたけど。
そもそも、知らんかったし。
「こ、こんなことを言う資格などないことはわかっているのだが……」
「なんだ? 言ってみろ」
ベロニカはなんかモジモジしている。
なんだよ往生際が悪いな。
「は、初めてなんだ。できれば優しくしてほしい」
うおおお!
なんだ、このシチュエーション。メチャメチャ興奮するじゃねえか。
ベロニカは耳まで真っ赤だ。
たまらん。こりゃあたまらん。
ただな、ベロニカよ。
お前は少し勘違いしている。
実は、おまえはもう初めてではないのだ。
寝ている間に、してしもーた。それも七回。
だから、次は八回目だ。
すまんかったな。ガマンできんかったのだ。




