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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
24/68

24話 エルミッヒの決断

 戦士風の女は冒険者じゃないのか?

 だが、すぐそばにあるカバンの中身は、奴隷を従わせるための魔法の首輪。


 まさか、こいつも売人側?

 ありうるよな。用心棒的ポジションか、実はボスとか。

 どっちだ? どっちだ? どっちだ!?


 一瞬考えた俺は女に近づくと……ガチャコンと首輪を装着してやった。

 カバンの中から拝借したものだ。

 そして、魔力を流す。

 よし、隷属(れいぞく)完了。これでコイツは俺の奴隷だ。

 奴隷女をズルズルと引きずっていく。

 どこか安全なところで治療しよう。

 そして、傷を完治させるのだ。


 いや~、壁となる前衛がほしかったのよねー。

 ほら、フックの能力って一人にしか使えないから。


 コイツが売人側だったら自業自得だし、たとえ冒険者側だったとしても、それはそれで。

 これで情報も得られるし、戦力も得られる。それに女だから……ムホホ!

 やったるで~!!




――――――




 あれから三日経った。

 女はまだ目を覚まさない。

 その間、俺はかいがいしく看病した。汗を拭いたり水を飲ませたり。

 もちろん、魔法で傷の回復も加速させた。その甲斐あって女はかなり回復したようだ。

 そろそろ目を覚ましてもいいと思うんだがな。


 しかし、困ったことに食料が底をついた。そろそろ外に調達しにいかなきゃいけない。

 ここは洞穴の中だ。入口を枝や草で見えないように塞いでいるが、目を覚まさないままの女を置いていくのはイヤなんだよなあ。


「う……」


 女がうめき声をあげた。

 だが、まだ目は覚まさない。

 この女、年のころは20前後だろうか、かなり引き締まった体をしている。

 髪の色はブラウン。目鼻立ちはクッキリしており、なかなかの美人だ。

 だが、気の強そうな印象は受ける。

 う~む。これはかなりの掘り出し物の予感だ。胸もシリもおっきいし。


「うっ」


 不意に女が目を開いた。

 まじまじと覗きこんでいた俺と目が合う。


 女は瞬時に横へ飛びのいた。

 速い!

 まさに電光石火だ。遅れて女の上にかけていた毛布がフワリと地面に落ちる。

 いいねえ、すごくいい。これは期待がもてるんじゃないか?


「おはよう」


 そう声をかけるも、女は俺から目を離さないままジリジリと後退していく。

 そのまなざしは非常に鋭く、警戒しているのは明らかだ。

 怒り、困惑、疑い、驚き、いろいろな感情が見てとれる。

 ただまあ、素っ裸なので、なんかオモロイ。


「まっ、とりあえず服でも着ようか」


 俺は洗って乾かしておいた女の衣類を指さすのだった。



 コップに入った水を手わたしてやる。女は素直に受け取った。

 だいぶ落ち着いたようだ。

 最初、すぐには服を着ようとはしなかった女だったが、自分の首に首輪がついていることに気づくと、納得したような、諦めたような表情になったのだ。


「名前は?」

「……ベロニカ」


 こちらの質問にもちゃんと答えてくれる。


「状況は理解できてるか?」

「ああ、わたしはお前の奴隷になった」


 間違っていない。が、なんか俺が人でなしみたいでイヤだな。


「ちょっと違う。死にかけたお前を俺が助けたんだ。そりゃあ、精魂込めて看病したんだぞ。その過程で、なんとなく首輪がついてしまったんだ。わかるか? なんとなくだ」

「……」


 返事はない。

 だが、表情から全く納得していないのがすぐに分かった。

 当たり前か。


「すまん、今のはウソだ。お前が気に入った。だから俺のモノにしたかった」

「……」


 これまた返事はないが、なんとなく納得しているような印象を受けた。

 もういいや。取り繕うのはやめよう。俺は自分の欲求に素直に生きることにしたのだ。

 がんばって魔王を倒しても、褒められるどころかこの始末だからな。

 どうせ怒られるなら、やりたいことを好きなだけやって怒られるほうがマシなのだ。


「お前たち争っていたな。その経緯を教えろ」


 俺がそう尋ねると、女はポツリポツリと話しだした。

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