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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
19/68

19話 悪あがき

「あなたはやりすぎました。穴の能力を返していただきます」

「はあ?」


 なに言ってんだコイツ。

 フォルティナの言葉にビックリする。

 やりすぎってなんだよ。悪いヤツを穴に落としただけじゃん。

 そりゃまあ、女子のパンツを吸い込んだりしたこともあったけど、練習じゃん?

 ケガさせたわけでもあるまいし……。


「やはりダメですね。悔い改めるビジョンが見えません。少年、分不相応のその力、返してもらいます」


 さらなるフォルティナの言葉に、イラッとする。

 なに言ってんだこのクソ女。

 だが、力など奪われてはたまったものではない。これは俺の生命線だ。決して手放してはなるものか。

 不本意ながらも頭を下げる。


「待ってください! この力を奪われたら生きていけません」


 いまは我慢だ。なんとしてでも、この難局を切り抜けてみせる。

 地面に這いつくばると、真っすぐにフォルティナを見つめた。

 その瞳は、きっとキラキラ輝いているにちがいない。


 ……しかし、あれだな。この女、ドスケベな顔してるな。

 フォルティナの潤んだ瞳、ふっくらとした唇、少し赤く染まった頬。

 さては、いたいけな少年をイジメて興奮しているのか?

 ならば――


「足を舐めます。誠心誠意、足を舐めさせていただきます」


 これで決まりだな。

 俺の決死の覚悟にフォルティナも言葉を飲み込んでいるようだ。


「……そういうことではありません。あなたには反省する機会が必要ですね」


 ところが、まさかの答え。

 なにィ。

 そんなバカな!


 フォルティナが手をかざした。

 まずい!

 とっさに飛びのく。

 大きく開いた穴をギリギリでかわすことに成功した。


 しかし、マズイ、マズイぞ。

 こんなことで逃げ切れる穴じゃないことは、俺が一番よくわかっている。


 俺は力の限り走った。そして、大きく手を伸ばす。

 だが、その瞬間、何者かに足を掴まれて激しく転倒した。

 青白い手だ。そいつが俺の足に絡みついているのだ!


 おのれ、負けてたまるか。

 力の限り手を伸ばす。

 そんな俺の執念は実を結んだ。

 倒れながらも、間一髪、取り巻き女子の足をガッチリと掴むことに成功したのだ。


「きゃ! ちょっと、なに」

「助けてくれ!!!」


 手だけでなく、両腕でガッチリホールドする。

 落ちんぞ~。俺は落ちんぞ~。


「やめてよ! 巻き込まないで! 離して!」


 取り巻き女子は俺を振りほどこうとする。

 なんてヒドイんだ。自分だけ助かろうというのか。


「少年。わたしにはもう言葉がありません」


 フォルティナがなにかを言っている。

 だが、関係あるか!

 離すものか、絶対に離してなるものか。


「あんまりだ! 魔王を倒したのは俺なのに! こんな仕打ち、あんまりだ!」


 なにがなんでも抵抗してやる。

 悪いのは女の方だと、力の限り叫ぶのだ。


「神様なんてウソっぱちだ。悪魔だ、えこひいきだ。やっていることは悪魔そのものじゃないか!」


 決死のアピール。

 だが、青白い手が何本も俺の体にまとわりついてくる。

 それは、必死で捕まる俺をひっぺがえそうとするのだ。


「みんなダマされるな! その女は悪魔だ! 言葉たくみに騙そうとしているんだ。みんな殺されるぞ。こうやって一人ずつ――」


 ついに俺の手が、取り巻き女子から離れてしまった。

 俺の体が、ものすごい勢いで穴に吸い込まれていくのがわかる。


「チクショウ、チクショウ、チクショウ」


 最後に映ったのは、遠ざかっていくフォルティナの顔だ。

 ふざけんな。こんな理不尽が許されてたまるものか!


「穴よ。最後に俺に力を貸してくれ。なんでもいい。あの女から能力をひとつ奪ってくれ!!!!」


 やがて、周囲は完全な闇につつまれた。

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