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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
一部 穴があったから入れてみた
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15話 新国王の誕生

「聞けい!」


 抜群のタイミングで声を張り上げたのはブランすでぃーだ。

 計画通り動いてくれたようだ。

 さすが元祖ブランすでぃー。他のブランブランさせているやつとは、動きも角度も一味違うようだ。


「王は不正を働いていた。それを是正(ぜせい)しただけに過ぎん!」


 ブランすでぃーの言葉に、みなザワつきだした。

 騎士。しかも大臣の息子の言葉だ。

 耳を傾けずにはおられなかったらしい。


「魔王だ! 王は魔王と結託して自身の地位を脅かしそうな者を葬ってきたのだ。国民の命と引き換えにな」


 俺たちが聞いた通りだ。

 むろん、事実だろう。計略や暗殺を主としていた組織に所属しているんだ。

 国の暗部(あんぶ)には誰よりも詳しいのだから。


「なにをばかな!」

「若造が! わけのわからないことを言うな!」

「ウソをつくな! そんなことをするはずがないだろう! コイツは狂っている!」


 とはいえ、みな素直に受け入れるはずもない。

 魔王との関係に加担していたやつは必至で否定しようとするし、知らないやつもそんなこといきなり言われてもって感じだ。


 しか~し。

 その程度は想定内である。

 ここからが本番よ。

 穴よ! みなの疑う心を吸いとってしまいなさい。

 国民よ! 正直に、そして、純粋になるんだ!!!


 俺が念じると皆の体から紫色のモヤが立ちのぼった。

 それは、もりもり穴へと吸い込まれていく。


「え? まさか王が?」

「魔王と組んで!?」

「そうか、そうだったのか!!」

「なんて汚いんだ。それでムダに死んだ人も、たくさんいただろうに……」


 みな、赤子のように信じはじめた。

 すげー、さすが穴。思考や感情ですら吸い込むのか。

 恐ろしい。自分でやっといてあれだが、なんてひどい能力なんだ。


「でも、なんであいつが王なんだ?」


 とはいえ、疑問は疑問。

 ひとりが俺を指さしてそう言った。

 みすぼらしいヤツがいきなり王だとか言っても、さすがにそこまで信じることはないみたいだ。

 そこで、すかさずブランすでぃー。追い打ち発動だ。


「あのお方をどなたと心得る! 正当な王位継承者、ローゼル・エルミッヒ様であらせられるぞ!!」


 あたりに衝撃が走る。


 ローゼル・エルミッヒ。

 ――そんなやつはいない。

 ブランすでぃーの創作である。


「まさか!」

「そうだったのか」


 無垢(むく)な人々は信じたようである。


「王には兄がいた。正当な王位継承者だ。ところが、卑劣にも王はこのローゼル・エルミッヒ様を亡き者にしようとしたのだ! おのれが王になるために!!」


 さすが、元祖ブランすでぃー。

 キレッキレである。

 王はオッサン。

 どう考えても俺とは年齢が合わないが、そんなものは感じさせないほどの名演説ぶりだ。


「なんと!」

「いや、兄にしてはずいぶん若いが……」


 そうでもなかった。

 引っかかったやつが出てきた。

 どうやら、あまりに辻褄(つじつま)が合わないと疑問に思うようだ。


「……」


 ブランすでぃーは一瞬言葉に詰まる。

 しかし――


「呪いだ! 卑劣にも王はエルミッヒ様に呪いをかけたのだ。それにより、あわれエルミッヒ様は石像のように活動を止めてしまわれたのだ」


「おお~」

「おいたわしや……」


 みな信じた。

 さすがブランすでぃー。いい仕事しやがる。

 約束通り相談役にとりたててやるからな。

 国のナンバー2だ。ありえないほどの出世だろう。

 俺としても助かる。

 メンドクサイことを丸投げにできるし。


「われらはエルミッヒ様をこれまでお守りしていたのだ。そして、今、王位は正当な持ち主のもとへと返されるのだ!!!」

「おおおおおお~!!!!!!」


 謁見の間は()きに()いた。

 異常なまでの大盛り上がりである。


「すまなかった~。わしらを殴ってくれ」


 五人オッサンも罪を認め、謝罪している。

 大泣きだ。みずから罰を求めるほどの変わりようである。

 それを聞いて、衛兵が数人、素直に殴っていた。

 その中にはブランすでぃーの姿もある。

 大丈夫? 五人オッサンの中に父親いなかったっけ?



 士爵の授与式は戴冠式(たいかんしき)となった。

 その後、王となった俺からリックたちに、爵位を授与する流れである。

 この国は新たな体制のもと、その一歩を踏み出したのだ。

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