ティータイム
ティータイム
何色ものバラが咲き誇る庭園を散策後、外で優雅にティ―ブレイク。
晴れ渡る大空と自然が演出する開放的な舞台。
王と兄たちは顔を出さない。
ナリットの判断に任せると言う事らしい。
それはそれでプレッシャーなのだが……
王子様!
ナリット様!
ナリット!
旦那様!
ふん! 王子なんて興味ないわ!
積極的にアプローチする候補者。
一人ツンデーラだけが浮いている。
はちみつ入りのホットティー。
甘ったるい。
テョコレートケーキと一緒に午後のひと時。
イーナイナが何事か喚いて引っ付く。
子供だと誰も気にしていないが引っ付かれるこっちに身にもなって欲しい。
ナリットは私の者!
幼馴染のアルールが大人げもなくイーナイナから私を引き離す。
ナリット。どう私は大人っぽくなった?
ああ、そうだね。綺麗だよ。
頬を染めるしぐさが可愛らしい。王子の幼馴染だけの事はある。
もし俺が初対面でなかったら受け入れていただろう。
それだけ魅力的な女性。
でもこの世界を、この第三王子としての立場を守るためには決して選んではならない相手。もしばれればお終いなのだから。
リスクは最小限で。それも無いに越したことはない。
イーナイナが膨れて怒り出す。
こうなるとただの駄々っ子だ。
喚き散らす。
泣いたと思ったらトボトボ歩き出した。
眠くなったのか芝生の上で横になる。
もうメチャクチャ。
今度は気持ちよくなってはしゃぐ始末。
芝生が傷ついては敵わない。
見かねたメイドの一人が抱えて屋敷へ。
一人脱落。
お口に合いませんでしたか? 他の物を持ってきましょうか。
エミーと村娘が手を付けていない。
緊張によるものか。
そんな事はありません。
そう言うと一口。
美味しいわ。
本当に美味しい。
感想を口に述べる。
それは良かった。
ツンデーラの方はと……
イーナイナに負けず劣らずの食欲と豪快さで場を盛り上げる。
もう少し抑えて欲しいものだ。
他の者の視線は気にならないのか?
ここに何しに来たのだろうか。
自分の立場を理解できているのか。
食欲旺盛なのか凄い食べっぷり。
ケーキはもう二皿目を平らげた。
紅茶も気にせずがぶ飲み。
マナー以前の問題に思えるがもう少し品よく願うばかり。
王子! こんなおいしい物が毎日食えるなんて幸せだね。
こんな生活も悪くないかもね。
ツンデーラは機嫌がすこぶるいい。
可愛らしく思えてくるから不思議だ。
ああ、楽しんでください。皆さんも。
小さなレディも退場したのでここからは少し大人の世界を楽しみましょう。
第二ラウンド開始。
その後もツンデーラを除いて熾烈な女の争いが続いた。
気を引こうと策を練る姿は恐怖さえ感じる。
その時にはもうツンデーラが三皿目を食べ終えていた。
まだお代わりするのか?
四皿目を用意させる。
ああ。食った。食った。
王子ごちそうさま。
ツンデーラ……
私の選択は間違っているのかもしれない。
ティータイム終了。
再び自室へ。
ラン! ラン!
お呼びでしょうか?
この後はどうしたらいい?
勝手になさってください。私はあなたのお付ではありませんよ。
どうしろと?
ほっとけばいいんですよ。王子様は受け身でいいんです。
無責任な物言い。少し疲れてる?
嫉妬してるのか?
滅相もございません。ただ疲れた。ああもう早く選べよ!
おっと心にもない事を……
もうほぼ決まっておるわ! しかしどう伝えていいやら。
王様に気に入った方を言ってください。それで終わりです。
しかし…… 王はツンデーラを嫌がっていたしなあ……
私もはっきり言って嫌です。だから他の皆さんも嫌でしょう。
失望してしまうかもしれないですね。
ただ、それだけで済みますかね。
うーん。悩みどころだ。一晩置こう。
ひとまずお伝えください。
ランの忠告を受け王の間へ。
王はもう寝ておられるだろうか。
扉に手をかける。
話し声が飛んできた。
どうでしょう。ナリットはどの子を選ぶやら。
ああ本当に困った我が弟。
兄二人の声が聞こえてきた。
俺の事を気にかけている?
誰でもいい。早くしろ!
バカ者! 慎重に選ぶべきじゃ。
王と兄たちが花嫁についてあれこれ話している。
聞こえた限りではやはりツンデーラは出てこない。
イーナイナよりもあり得ないと言うことか?
ノックをしても聞こえないようだ。
それだけ真剣に話し合ってくれている。
ふう。困ったな。
中に入るタイミングを失った。
再び、聞き耳を立てる。
それはそうと今勢力を拡大している西の者を放っておくのは危険では?
その事はもう考えている。
つぶしますか?
いや穏便に済ませたい。あちらの出方次第だが和平を結ぶのも手であろう。
それではどう?
ナリットに行ってもらいたい。奴もそろそろよその空気を吸うのもいいだろう。
ナリット一人で大丈夫でしょうか?
お前らがついていくなら止めんがな。
もうナリットも一人前だ。相手を決め次第行ってもらうつもりだ。
王の厳しい姿勢はナリットに対しても例外ではなかった。
ナリットも災難だな。あんな小国の為一年以上もか。下手するとそのまま。
兄さん。要は人質って事だろ。
まあ、そうだな。しかしナリットが納得するだろうか。
王の命令は絶対だ! 例え王子であろうとも。分かっておるだろ?
二人をけん制する。
はっは! 分かりました。我々に異存はありません。
兄たちがこちらへ。
慌てて隠れる。
ふうう。危なかった。
時間を置いて王に報告する。
ナリットか?
父上。まだ決めかねております。もう少し時間を頂けたら……
良かろう。明日までに決めよ! それ以上は待てんぞ。
それから近いうちに行ってもらう事になる。詳しい話はその時に伝える。準備を整えるように。
正式ではないものの王の意向を尊重せねばならない。
はい、父上どこにでも。お任せください。
報告終了。
続く