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謎の女ラン

到着。


歓迎を受ける。


王子様ごきげんよう。

少女が笑顔で迎える。


何か困りごとはあるか?

奥から母親が現れた。


これはこれはいつもありがとうございます。


従者と世間話を始める。


イライラ。


長い! 長すぎる!

まだ? まだなのか!


心の中で毒ずく。

不真面目な王子。


ああ。面倒臭い。


少女と目が合った。


ははは。

態度に出てしまったのか?


ははは。

笑って凌ぐ。


子供には分かるまい。


少女がこちらを見つめる。

恥ずかしそうに笑うその姿にドキッとする。


それから五分経過。次の家へ。


おう! 王子様かい。家で取れた果物なんだけどどうかな。


従者は礼を言い受け取る。


もちろんヨーク家の口に入ることはないが村人の好意を無下にはできない。

どうするのかは聞かないことにする。


寄ってくよ!

あら王子様まで。


こうして家々を回った。


疲れましたね王子。ちょっと寄っていきましょうか。


看板が掲げてあった。


ナスカの家。

ドリンクショップ。


いらっしゃい! あら、王子様も一緒かい? 今、手が離せないんだ。好きなところにお座りよ。


村人が仕事を終え一杯やっている。


一番奥の席に陣取る。

ここがいつもの指定席。


何になさいますか。

それじゃあ。いつもの頼むよ。

王子様はどうします?

同じのを頼む。


まあ、珍しい。

すぐにお持ちしますね。


店は繁盛していると見える。

小奇麗にしておりお洒落な店内。

壁にはでかでかと地図が貼られている。


どれどれ。


とにかく情報が欲しい。

ボロが出る前に対策を。


急に店内が騒がしくなる。


酔っぱらいが楽しそうに歌いだした。

陽気な午後のひと時。


皆、上機嫌。

一人を除いて……


ウルセー! こっちは静かに喰いてえんだよう!


隣の席の者が喚いた。


酔っぱらいが!


へへへ。姉ちゃん。見かけない顔だね。どこから来たの?


女はパンを一掴み。口に入れて洋酒で溶かす。


ウルセー! お前らには関係ないだろ!


お隣が騒がしいようです。移りますか?

いやいいよ。

そうですか。王子様がそうおっしゃるなら。あのちょっと用を足しに。


従者は走って行ってしまった。


隣の女が不快そうな眼で追う。


女は食事を終えた。


ふうう。食った食った!


下品な奴め。


王子様。何か変わったことはなかったかい?

君は誰だ?

誰だっていいだろ! 変わったことはなかったかって聞いてるの。 ああん?

無礼者!


会話になってない! 変わってないか聞いてるんだって。

何を言っている?


自分はランってんだ。よろしくな。

ああ、ランよ何か話があるのか?


変わったのは王子様自身か? 前とはずいぶん違うような……

まあ成長したからな。前にどこかで会ったかな?

いや初めてだ。でも王子様が違うのは分かる。いや知っているかな。


無礼者! 王子である私を疑うのですか?


もう。からかっただけだよ。自分はラン。神の使いだ!

お前が?

そうでございます。太郎王子。 ひゃははは。


ランは酔いが回ってきたのかどんどん下品になっていく。


その名はやめよ。気に食わない!


はいはい。詳しい話は屋敷に行ってからしてやるよ!


ひゃっははは。


王子様お待たせしました。

従者が戻ってきた。


ちょうどよかった。この子は旅の者なんだ。ぜひうちの屋敷で働きたいと言っている。何とかしてやってくれ。


自分はランと言います。よろしくお願いします。


王子がいいのでしたらこちらは構いませんが。

厳しくしてやってくれ!

ちょっと王子!


慌てるラン。


冗談ではない。気楽な一人旅。なぜメイドになど……


ステーキとサンドイッチでございます。

料理が運ばれてきた。


ようやくありつけた豪勢な食事。

勢いよく平らげる。


ちょっと王子様。もう少し抑えてください。村の者が見ております。

うるさい! お前も食え!


太郎に戻ってしまった。


王子!


日が暮れた。

三人で屋敷に戻る。


健康的なディナーを終え自室に戻る。


初めての夜。少しの不安がよぎる。


コンコン

入れ!


メイドが寝間着で迫る。


今日の添い寝を任されました。

要らぬ! 出て行け!

王子様! 私が嫌いになったのでございますか?

そんな事は無い! しかし今晩は一人にして欲しい。


飛び出し行ってしまった。


あらあら。


開けっ放しのドアからランが姿を現した。


ラン?


勿体ない事をしたわね。前世ではこんないい思いできなかったでしょうに。

からかうのはよせ! あー疲れた。王子も楽ではないな。


太郎王子。あなたの秘密は守りますよ。

秘密と言ったって前世の記憶ではないか。そんなものふっ飛ばせばいい。


太郎王子。

太郎はよせ。その呼び方は気に食わないと言ったろ。

では王子。


俺はどうすればいい?

このまま。時に身を任せるのです。

好きにしろと?

はい。


自由にハッピーライフを満喫してください。


だがこの家もこの国も村も良く分からん。分かるのは第三王子として役目を果たす。困っている村人の手助けだが何か意味があるのか?


さあ自分は聞かされていません。いきなりこの世界に行けと命じられたまで。あなたと同様。この後の事は誰にもわかりません。神のみぞ知るでございます。


                       続く


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